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2024/04/16 16:09 |
[Review] TOKYO!
TOKYO!東京     
伝統とポップカルチャーが入り乱れるように軒を連ねる不思議な街。昼と夜との人口が100万人単位で異なる一方、夜でもネオンの光が煌々と輝く不夜城都市。
海外の方から見た『東京』は、かつては『exotic』なイメージだった。どんな国にも存在しない独特の文化と雰囲気を醸し出す異国情緒の街。でも、今は『eccentric』というイメージが相応しい。それも、どこの国のどんな街よりも。そんな『東京』を、個性的な3人、ミシェル・ゴンドリー監督、レオス・カラックス監督、ポン・ジュノ監督がそれぞれの視点で表現する。今作は、有り得ないのに、どこか有り得そうな、オムニバス形式の作品。

『INTERIOR DESIGN』は、自分の居場所を探し求める普通の人の物語。
よく東京の人たちは、みんな個性的と言われるけれど、街中を歩いていると、個性的に見えても際立っているわけでもなく、割りと東京の街に溶け込んでいる。『東京』の街そのものが個性的だから、その個性の一部になってしまっている。そうなると、いくら個性的に着飾っても、『目立たない』のと大して変わらない。
では、『個性』って何だ? 自分らしさって?
『東京』は何でも揃う。だから何でも埋没する。新しいものが出ても、数年も経たずに。
『東京』の人たちが個性を表すには、もはや『人間』でいることですらも叶わないのかもしれない。
自分を見てもらう為なら、自分を知ってもらう為なら、そんな風にもがき苦しむ普通の人を、シニカルに描いている作品。

『MERDE』は、マンホールから突如現れては、道行く人に危害(ほとんどは悪戯に近い)を及ぼし、そしてマンホールに消えていく一人の男の物語。人呼んで『下水道の怪人』。ついには捕まって法廷に出廷するのだが、もはや法廷侮辱をゆうに超えている罵詈雑言の嵐。ムカチンッとくる傍らで、言い得て妙な複雑な気分にさらされる。
彼は、都市に生きる人間が生み落としたものらしい。そこで僕が思ったのは、彼の正体は下水道に生きるネズミとかゴキブリとか。本来なら彼らだって、自然の中で悠々自適に生きたいと思っているのに、人間の身勝手な都市開発で地下の汚れた惨めな生活を余儀なくされ、人前に姿を現したら殺されるまで追い掛け回される。結局のところ、人間は自分たちが生んだ副産物も、都合が悪いものは見て見ぬ振りをする。
彼が捕まった後、彼を追放する団体と、彼を擁護する団体がデモを引き起こしてお互いに対立する。でも、それすらも人間たちの一時凌ぎの策みたいで、根本的解決には至っていない。まるで、今の刹那的で短絡的な人間の行動を見ているかのようだ。

『Shaking TOKYO』は、画一プログラムと無関心がテーマ。ポン・ジュノ監督の、恐ろしいまでの観察力が凝縮しているように感じる。
朝のラッシュの道行く通勤客。同じ方向に同じ速さで通り過ぎる。特に会話も無く、表情すらロクに出さず、まるで囚人の行進のように職場へ向かう。きっと明日も、明後日も、何ヵ月後も何年後も、同じような光景なんだろう。
街中で軒を連ねるコンビニエンス・ストアー。接客業であるはずが、店員は客の目を見ていない。機械的にものをレジに通し、金を勘定し、袋に詰めればそれで終わり。「ありがとうございました」って言えばまだマシな方。そんなコミュニケーションレスは当たり前のように闊歩し、プライバシーの侵害が曲解され、隣近所で何か由々しき事件が起こっても、みんな無関心で押し通す。
だからこそ、人と人との出会いは、触れ合いは、ただの出来事に及ばず、全てを巻き込むほどの化学反応にもなり得る。割と『クラッシュ』に近いところがあるように思う。干渉したくない、されたくないって思いながらも、心のどこかでは人との触れ合いを求めている。


3つの作品における共通事項といったら、『不安定』だと思う。
いつ崩れるか分からない、かなり危うい領域なのに、ギリギリのところで均衡を保っているのか、それともかなり頑丈な『不安定』なのか。危ない局面を幾度と無く迎えつつも、何だかそのまま突っ切ってしまいそうなパワーも感じるのも事実。恐ろしいようで、そこが楽しい。進化しているようにも見えるし、逆に退化しているようにも見える。『あやふや』こそが、『東京』の最大の特徴ではないかと思う。頼りないように見えるけど、色んな見方が出来るから。
『不安定』の恐ろしさの中にも、『楽しさ』を見出せるから、東京はいつまで経っても面白い街なのだろう。

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2008/09/03 23:35 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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