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2017/08/17 10:52 |
[岩手] The country of fairy tales
柳田國男の『遠野物語』の世界観に興味を抱き、今でも民話があちらこちらで息づき、伝承されている遠野へ行ってまいりました。

『遠野物語』は、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、洋の東西を問わず童話や小説に出てくるような、因果応報が話の本質として物語られているものではなく、その地方に伝えられている伝承を、柳田國男が見聞きし、脚色もほとんどせず、ありのままに伝えている、というもの。結果として良い方向の結末となったり、悪い方向の結末となったりするも、「こういう善事を行ったから」とか、「こういう悪事を働いたから」等の、物語の結末に結びつくような因果関係はあまり出てこず、まるで昔からそこに『存在していた』かのように伝承される物語が伝承されるままに、淡々と綴られています。
読んだ本から、『何か』を得たい、と思う人が手に取れば、多分すぐに手放してしまうかもしれないくらい、『物語』と銘打っているにもかかわらず淡白な本と思ってしまうのではないか、と思います。しかし僕は、脚色が一切無く、伝えられていることが伝えられている通りに綴られている、ということが、読み手が如何様にも解釈できる、と思うのです。そここそが、『遠野物語』の一番の魅力なのではないか、と。


遠野の田園風景 カッパ淵 伝承園


当初の目論見では、街の至る所で、遠野に永く伝えられる伝承の石碑や遺跡が点在するものと思われていましたが、思ったほど多くはありませんでした。恐らく、『遠野物語』の数々の伝承は、文字として目で見て、それを情報として取り込む、という類のものではない。多くが語り部を通して語り継がれている、もしくは遠野の故郷の情景から、伝承の世界に住まう『住民たち』の息遣いを感じ取る、そんな風に感じ取りました。
それもあってか、駅前の商店街には、飲食店や雑貨屋さんが立ち並ぶも、その看板に並んで掲げられているように、『語り部』の看板が。遠野の物語が、あまり文字として残さず、語り継ぐことによって後世へ伝えられてきたことが分かります。
柳田國男が、『遠野物語』を執筆する際、それらの伝承のほとんどを脚色することなく伝えたのは、『文字にする』ということによる畏敬の念があったから、なのではないかと思います。僕の勝手な解釈なんですけれど。。。

そんな、伝承の世界に住まう『住民たち』を感じる遠野の街並みは、澄み渡って清々しく、素晴らしいの一言。夜行バスで向かい、遠野に到着したのは朝の6時頃。霧が濃く、お世辞にも見通しが悪いスタートでしたので、その時点ではそれほどの期待を寄せなかったものの、しばらく街を散策したら、その霧は一気に晴れました。空は一面の青空、青々と生い茂る新緑と、豊かな水と若い稲がどこまでも続くかのようにが広がる田園風景。古来より伝わる日本の田園が、目の前いっぱいに広がっている様は、今でも忘れえぬ思い出です。

特にお勧めなのが、遠野の故郷の風景と民芸を今に伝える、『
伝承園』と『遠野ふるさと村』でしょうか。風と葉擦れ、そして水の音しか聞こえず、のんびりと時を過ごし、遠野の、そして日本の故郷を満喫したり、また当時の生活習慣を学ぶには最適の場所だと思います。
また、『伝承園』では、おばあちゃんたちが、藁や生糸を使って、民芸品を作っています。遠野物語に登場する『おしらさま』や、『座敷童子』の人形が販売されていました。『伝承園』では、生糸のために実際に養蚕も行っているため、夏休みの自由研究等にもうってつけかもしれません。


遠野を後にして、その次は花巻へ。童話作家・宮沢賢治の生まれ故郷であり、彼が生み出した名作が、博物館や童話村として息づいている街へ向かいました。
宮沢賢治の博物館に入ってまず思ったのが、宮沢賢治が、単なる童話作家の枠に納まらず、様々な分野に秀でていた、ということ。学校の先生、ということもあってか、天文学をはじめ、諸外国の知識や農業など多岐にわたり、まるで明治時代のレオナルド・ダ・ヴィンチのよう。そういった多岐にわたる知識の吸収と、彼が『イーハトーヴ』と呼んだ岩手の自然が、彼の想像力を大いに駆り立て、様々な作品を生み出したのではないかと思いました。これまで、単に宮沢賢治の作品を読んだだけで、その側面でしか知らなかったので、別の一面を垣間見ることが出来たようで、新鮮でした。
既に、子供のころに宮沢賢治を読んだきり、最近では全く触れていなかったので、もう一度、彼の作品を読み直し、宮沢賢治と、彼が住んだ花巻に息づく世界に、再び浸ってみようと思った次第です。


遠野、花巻は、岩手県の内陸に位置する地域であるため、東日本大震災の影響は全くと言っていいほど受けていなかったように思います。顕著な爪痕がなかったとはいえ、やはりどこかしらで震災を受けたことによる陰鬱な空気が僅かながら漂っていたようにも思いました。
現実を直視し、ほんの僅かでも一歩一歩着実に前を向いて歩こうとする人もいる傍らで、いまだに現実を受け入れられず、失った悲しみから立ち直れない人もいらっしゃいます。これまで育み、培ってきた思い出や土地が、無残にも破壊された姿を目の当たりにすると、何と言葉をかけたらいいか、分からない遣る瀬無さに苛まれます。
遠野にしろ花巻にしろ、ここには、東北初の伝承が今でも残っています。姿は見えないけれど、昔から感じ取り、語り継がれてきた『存在』が、確かに息づいています。大切な人を失い、もう戻ってこないけれど、見えないけれど確かにいる『存在』が、今でも東北を、東北に住む方々を、天から、地から、見守っているような気がしてなりません。永く伝わる素晴らしい土地、破壊されることなく、これからもずっと語り、守り続けていきたい。そんな思いを馳せた旅でもありました。



『岩手県』の写真集についてはこちら

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2011/07/02 22:40 | Comments(1) | TrackBack(0) | Outdoors

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コメント

水田の写真がとても気に入りました。
googleリーダに登録させていただいております。
google+に参加して依頼おかしな現象ばかりでPicasaにもコメントできないことが多いです。(たった今も)
何時も素晴らしい写真に感心していますが、文学や映画の知識が豊かな方と思います。
私はあまり理屈で行動するタイプでないので、とても羨ましいです。
posted by 老人と瀬戸内海at 2011/07/22 11:15 [ コメントを修正する ]
Re:楽しく拝見しました。
Picasaではお世話になっております。そして、Blogでもコメント有難うございます。
私はgoogle+にまだ入っておらず、老人と瀬戸内海様の写真にコメントできずにいます。。。 申請はしてみたものの、まだお返事はなく、という状況です。。。(^^;)

また、素敵なコメントをいただいて大変恐縮ですが、かく言う私も、理屈より衝動で動くタイプの人間ですよ(汗)
ただ、私の稚拙な映画や紀行の文章でも、お気に召していただいて大変光栄です。少しでも、日本や、そして鑑賞した映画の素晴らしさを共有できたら、と思い、このBlogを続けております。更新はそれほど多くはありませんが、これからも御贔屓にしていただければ幸いです。
2011/07/22 22:55

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