残念ながら、第76回米アカデミー賞は作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞などとノミネートされましたが、ほとんどを『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が受賞してしまいましたが、『疑心暗鬼にかられた人間』を巧みに描きあげた作品として、素晴らしいものだと思います。
ただ、物語全般を通じて、暗めに作られているのが、好む人と好まぬ人の明暗が分かれているのでは、と。この年の米アカデミー賞は、大部分が『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が受賞しましたから、壮大で冒険心を駆り立てるようなファンタジーが好まれたのでしょうか? まぁ、主演・助演の男優・女優賞は、別作品が受賞しましたけどネ。主演女優賞では、『モンスター』のシャーリーズ・セロンですね。
そういう意味で、登場する人物一人一人の、『心打たれる演技』というのは、CGや物語の壮大さの中よりも、素朴な物語の中で光るものなのかもしれません。
個人的に難を言えば、やっぱりスクリーンで観たかったな、と。
DVDを借りて観たものの、物語の複雑とその裏に潜む登場人物の疑心暗鬼が、一般家庭のTVからではうまく読み取ることができなかったような。
この映画はミステリー映画ですが、それ以上に、「徐々に人に浴びせる視線に疑いの色が濃くなる」という、人間の内面の醜さというか、それこそ『人間らしい』というべきか、いわゆる人間が持つ負の心情を強く描かれています。それも、やっぱりTVだとちょっと物足りなかったような……
まあ、スクリーン事情をうんたら述べても仕方ないのですが。
『ヒューマンドラマ』というと、正反対の人が触れ合いによって化学反応のように一つの方向に向かっていったり、決して一緒になることもできないのにそれでも愛し合ったり、題材は異なれど、そういうパターンが主流だと思うのですが。こういう『負』の心情を巧みに絡み合わせてドラマを紡ぎ出すというのは多分初めてなので、それはそれで新鮮でした。
感動は無く、いい後味を残すような作品ではないけれど、見ごたえはあると思います。
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