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2024/11/22 00:18 |
[Review] ベンジャミン・バトン 数奇な人生
ベンジャミン・バトン 数奇な人生もし、生まれた時が老人のようで、歳を取るごとに若返っていく。もしそれが自分自身だったら、一体どうしていたか。
皆が年をとり、皺が増え、身体も自由に動かなくなる傍らで、自分は少しずつ身体が動かせるようになり、皺も無くなり、視力も聴力も改善され、肉体も生き生きとしていく。最初のうちは大変かもしれないが、結局同じことなのかもしれない。最初は動けないし人の世話を借りてばっかり。そのうち経済的にも精神的にも自立し、最後にはやっぱり人の世話になる。
しかし、「若返っても歳を取っても、行き着く先が同じ」という考えは、物語の最後の方であっさりと無くなっていました。それは、「誰かと同じように年を重ねるということが絶対に出来ない」ということ。急に恐ろしくなりました。「他人とは違う人生を送りたい」と思う傍らで、「誰かと同じように歳を取りたい」と思っていることもまた事実。というより、「歳を重ねることの苦労を共に分かち合いたい」という感情でしょうか。
自分は特別だと思っていても、結局はそれも束の間の出来事。同じように歳を重ねることが出来ないと分かった瞬間、あがらうことのできない孤独感が身体中を駆け巡る。そして、歳を取ることに逆らえないことと同じように、若返ることもまた、逆らうことの出来ない運命。
歳を取ることが神が与えた呪いなのなら、若返ることもまた、神が与えた呪いなのかもしれません。


そんな、数奇な運命を辿った一人の男の物語。小説やマンガとかではあり得そうな設定。でもそれが、実写として目の前に映し出される。勿論、CGや特殊メイク等の技術を駆使しているとはいえ、そのあまりにもリアルな表現には、正直息を飲んでしまいました。
多分、「生まれた時は80歳代で、歳を取るごとに若返る」という人物だけの物語なのなら、あまり実感が伴わない作品かもしれません。ですが、主人公であるベンジャミン・バトンをさらに際立たせているのは、いや、ベンジャミン・バトンが際立たせている、と言い換えてもいいかもしれません、そんな主人公と対を成すもう一人の人物、それが、僕達と同じように歳を取っていくデイジーの存在。
デイジーがまだ無垢な少女であった時、ベンジャミンは歩くのもままならない老人だった。それが、デイジーが少女から女性へと美しさを増すにつれ、ベンジャミンの毛髪は増え、筋肉も増し、杖も無く歩けるようになる。人生の中間地点。二人はようやく歳相応になる。

しかし、喜びも束の間。燦然とした輝きを放っていた彼女も、やがて皺がふえ、肌にはしみができるようになります。でも、ベンジャミンはどう見ても高校生か大学生と見まがうような青年の姿。恐らくこの時が、ベンジャミンにしてもデイジーにしても、最も呪いたくなる時期なのかもしれません。
人生は何が起こるかわからない」。もしあの時こうしていれば、もしあの時こうだったら、こんなことは起こらなかったという連続が、後悔の念として今でも人々の心の中に植えつけられる。凶悪な事件の渦中にいたのなら、尚更でしょう。それでももし、ひと時の幸せをかみ締めることが出来るのは、傍らに共に人生を歩んでくれる人がいるから。
時を止めることが出来たら、時を巻き戻すことが出来たら。後悔と挫折を一度でも味わった人なら、誰でもそう思う。でも、時間は待ってはくれない。冷酷で残忍なほどに確実に時を刻んでいく。ただ、どんなに頭の中で分かっていても、同じ時間の中に生きていると知っていても、「同じように時を感じる生き方が出来ない」というのは、残酷以上に辛辣。
この物語の終わりは、たとえ短かったとはいえ、やはり観てて切ない部分がありました。すっかり年老いておばあちゃんになっているデイジー。でもベンジャミンは、見た目は4~5歳くらいなのに、既に認知症が発症して、もはやデイジーですら分からない状態に。最期は、肌も張りがあり、目もぱっちりとした赤ちゃん。それが、まるで未練を全く残さないかのように、静かに息を引き取っていきます。


老いるということの恐ろしさもそうですが、人生を普通に、誰かと共に歩んでいくことの素晴らしさを教えてくれる物語。自分が今、どんな境遇であれ、どんな人生であれ、どれだけの価値のものや金銭に囲まれていようと、行き着く先は皆老いであり、死である。
誰かと共に時を過ごせる、たったそれだけでも、どれほど素晴らしいことかが描かれている作品と思います。

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2009/02/08 13:58 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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