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2017/05/28 21:23 |
[Review] パフューム ある人殺しの物語
パフューム ある人殺しの物語 その香りが、欲しい     

それは、ただの探究心ではなく、恍惚に浸り、自らの官能を満たすための欲望の標。

その香りが、欲しい     

たった一瞬、我が掌中に収まるだけでは飽き足らない。その香りは自分のものだ。永遠に自分のものだ。死ぬまで。いや、死んでも尚。

その香りが、欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい     


これまでにも、芸術性に溢れる映画作品は数多く輩出されていますが、『香り』を、芸術作品のように美しく、そしてサイケデリックに表現した映画というのは、今作が初めてなのではないかと。
人格を疑われそうで怖いのですが(笑)、サイコスリラーの要素満載の映画は、僕の好きなジャンルの一つでもあります。

あらゆる香りを、それが遠く離れたものでさえも嗅ぎ分けられる鼻の持ち主。
至高の香りを求めた結果、ついに彼はえもいえぬ香りに到達する。
何としてでも手に入れたい。この探究心が満たされるのであれば。
だが、もはや探究心ではなくなっていた。その香りを手に入れるため、おぞましいほどの凶行に手を染めてしまったから。

彼が頭を垂れる対象は、その身の全てを委ねてしまえるような、麻薬のような『香り』。
それ以外は、ただのモノ。彼の欲望を満たすためだけの、ただのモノ。
だから、善悪が分からない。何が良くて、何が悪いのか。
我が望みを叶える為に、必要なものを手に入れようとしただけだ。
何がいけない? 何が悪い?
見ろ。我が凶行の成れの果ては、こんなにも多くの人間を平伏させている     


香水の瓶から放たれる香り。それは、生きとし生きるもの全てを狂わせる、甘く、魔性を帯びた禁断の香り。全ての人間が涙し、全ての人間が悦に耽る、神の如き香り。


残念ながら、『映画』という媒体である以上、本当に『香り』が伝わってくることはありません。
この作品において、どのように『香り』を楽しむか。
それは、目に飛び込んでくる映像と、耳に入ってくる音声で楽しみます。
たから、なるべく静かな、雑音が出ない人の少ない日時にご覧になることをお勧めします。

映画では『香り』が伝わらないからこそ、その目を凝らし、その耳をすまして感じ取る『香り』。
足を踏み入れれば、もう元に戻れない禁断の領域。でも、足を踏み入れずにはいられない『悦の世界』を、感じることが出来るはずです。
この作品に関する様々な感想のHPを拝見致しましたが、特に↓のページのコメントに、非常に感銘を受けました。

http://d.hatena.ne.jp/otello/20070305

彼にとって『香り』とは、ものの存在を認識するため道具に過ぎなかったのです。『香り』と通して「そこにそれがある」ことを認識しますが、ただそれだけに過ぎなかった。
赤毛の美しい乙女から発せられる香りを体感するまでは。

「狂おしくなるくらい、どうしても手に入れたい香り」
その乙女の香りを手に入れることは、その乙女を手に入れることでもあった。すなわち、彼女の愛を手に入れること。極端に表現の乏しいグルヌイユにとっての、精一杯の愛情表現。そしてそれは、一切の体臭をまとわない彼自身の、『存在』を示したいがための意思とも考えられます。

しかし、その結果は決して彼の望むものではなかった。
重犯罪を犯した罪人でありながら、超越的な『香り』が、彼を神格化する。しかし、群集の彼に対する眼差しは、あくまで神のような『香り』をまとった者であり、『グルヌイユ本人』ではありません。それは、ラストのシーンも同じで、パリに戻ってからも、誰も『グルヌイユ本人』には気づかない。超越的な『香り』を身にふりかけ、神格化した時に、群集は彼に気づく。

『グルヌイユ』という『存在』を示すことに渇望していた青年は、もはや落胆する以外に他なりません。


これらはもしかしたら深読みなのかもしれません。しかし、それまで不遇の人生を辿り、『自分』というものの表現方法に乏しい青年の、精一杯渇望するアイデンティティを植えつけた『香り』。改めて、その人智を超えた魔性の力が表現されている、と思いました。

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2007/03/03 23:29 | Comments(0) | TrackBack(11) | Review - Movie

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