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2024/11/22 11:37 |
[Review] ダークナイト
ダークナイト得てして、悪党というのは、欲望を目の前にすると、手元が狂う、目的がかすむ。その欲望を満たしたいがために、課された目的を台無しにしてしまう。
真の邪悪というのは、そんな欲望すらもそぎ落とした存在なのだろう。だから迷いが無く手元が狂わない。目的を見落とさない。自分が思い描いたとおりに世界が動く。自分が思い描いたとおりのルールが、世界に蔓延る。
そんな邪悪な存在だから、人心を操るのもうまい。スピリチュアルな部分ではなく、詐欺師的な手法で。選択を課された側は、それが誰かの生命を奪いかねないとは知らずに。「他人を押しのけても、踏み台にいても、生き残りたい」という欲望。古来より人間誰しもが持っている、そしてそれによって幾度と無く争いの元となってきた欲望。『二つのうち一つ』という限られた選択を巧みにちらつかせ、人の奥底に眠る醜い悪の部分を引きずり出す     



今作が、アメリカで歴代新記録となるほどのオープニング興行収入を得ていた、ということですが、確かにそうだと頷ける作品です。
これまでにも、予想できない、先が読めない作品というのは数多く公開されていますが、この作品以上に、「次に何が起こるか皆目検討がつかない」という作品は無いのでは、と思うくらいの展開。
また、犯行を計画しているのは、確かに今作の黒幕である『ジョーカー』。でも、実際に犯行に及んでいるのは、ほとんど彼本人ではない。彼の手駒であり、そして彼の犯行計画によって嵌められた一般市民。「自分だけは生き残りたい」という欲望を巧みに利用した、極めて狡猾な犯行計画。そこには、『勧善懲悪』という言葉は存在しない、一歩間違えれば、これらの悪と奮闘するバットマンですら悪に染まってしまうかもしれないという危うさを醸し出しています。

考えさせる、というより、エンターテインメント作品でありながら人の心の中の深い闇に入り込み、人心そのものを問う社会派作品的な側面も持つ、最高傑作の作品であると思います。


この作品では、これとは別に感じた側面があります。それは『ヒーローに頼りすぎたツケ』。

どんなに常人の力を誇ったとはいえ、バットマンはこの世に一人。それも、実は宇宙人というわけでもなく、突如超人的な能力を得たわけでもなく、自らの自助努力によって力を得た、『人間』。だから、全ての悪事を解決できるわけでもなく、見通せるわけでもない。それなのに、人は都合のいいところでバットマンに頼り、都合が悪くなるとバットマンを罵る。だから、いざ自分達だけの力で選択しなければならない直面に立ち会った時、社会ではどんなに偉ぶったご大層な人物でも、醜い一面を見せる。まるで、ジョーカーが「待ってました」と言わんばかりの醜い一面を。
それこそが、これまでヒーローに頼りすぎていた人間の脆弱な一部分であり、それが増長すれば、誰しも自分が助かりたいと、醜い争いを始める。

それでも、人間の心の奥底は完全なる悪ではなく、ほんの少しでも良心が存在する。そう思うのがバットマンだけ、というのも、まだまだ哀しい話ではありますが……


全てが恐怖と闇色に渦巻く世界を、フィクションでありながらも限りなくリアルに近づけて描いた『ダークナイト』。完全に予測不可能な世界を、どうぞ最後までご覧になってください。

ジョーカーを演じたヒース・レジャーと僕は、同い年。それだけに、彼が亡くなったというニュースを見た瞬間、全く信じられませんでした。何が起こったのか。今作で見事な怪演を果たした彼は、公開前も公開後も、非常に多くの注目を浴びていたのに、あまりにも残念です。

謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。

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2008/08/10 11:23 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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