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2024/04/20 03:41 |
[Review] ソーシャル・ネットワーク
ソーシャル・ネットワーク友達にしたら確実にメンドクサイと思われる人、と言われたら、確実に挙がる人だろうなぁ、というのが第一印象の作品。凡人にしたら絶対に分からない、分かるはずのないその卓越した頭脳は、まるで北野武監督を彷彿させます。得てして、『天才』と呼ばれる人はそうなのだと言わんばかり。
加えて、話すのが早く(彼だけではなくその周囲の人も)、ただでさえヒアリングに弱い僕が、一層英語を聞き取れず字幕にすぐさまギブアップしてしまったのは言うまでもなく。加えて自信家で、自分の作るものを誇示して止まず、頭にひらめいたらすぐさま行動せずにはいられず、そのくせ人の意見や忠告にはほとんどといっていいほど耳を傾けず、ひたすら狭い視野の中で自分の臨むままに突っ走る。周囲はそれに辟易し、構いたくないし構われたくもないと思いつつも、どこかで彼を意識せざるを得ない。いい意味でも、悪い意味でも。

そんな、いい意味では破天荒で型破りで、悪い意味では自分の信じたものしか持たず侍らず磨かない視野の狭い、気まぐれではないにせよ自分の視野・視界に入らない、または入る価値のないものは容赦無く振り落す主人公。そのまま年を取り、Facebookを世界的に有名にしても尚そんな自分で居続けるのかな、と思ったら、そこから先は思わぬ展開が。
一つは、Facebookの立ち上げから一緒だった友人が、『裏切り者』になってしまう、ということ。正確には意図的に『裏切り者』になったわけではありません。成り行きと、その後、巨大化したFacebookと彼との意識や方向性の違いが、そうなってしまった、というのが所以かと。
もう一つは、自分の意向や誇りと方向性を同じくしている人の、本性を知ってしまう、ということ。誇大広告とも捉えかねないが、一部の人にとっては心を鷲掴みにされてしまうくらいの卓越した話術。主人公にとって、譲れないものを抱えながらも、それを持続させるためのアイディアとコネクションを捻出。主人公にとっては、有難い存在ではあっただろうと思います。その時が来るまでは。慢心家の裏に潜む『危ない奴』の本性。きっとそれは、友人だけが知っていたのかもしれません。

そうして彼は、『億万長者』になりました。勿論、そんな成功を支援する『億万長者』もいれば、彼の『億万長者』を妬む者も。後者の方は、実際はどうなっていたのかは分かりませんが、少なくとも映画の中での描写では、正に敗者の薄汚いとも言える逆襲。まぁそれも、主人公のことが気になって仕方がないことの裏返し、とも言えなくもないですが。
それはともかく。
Facebookが成長するにしたがって、会員数も増えて、自分が手掛けたことが大きく成長していくのは嬉しかったけれど、結局のところそれはインターネット上での話。リアルな世界では、これまで一緒に戦ってきた人との軋轢が増えるばかり。そこで気づく。彼が本当に欲していたもの、望んでいたものは何か、を。
僕も実際そうじゃないから、素直じゃない人の気持ちはわかる。彼は、自分を見てほしい、自分を必要としてほしい、自分を認めてほしいという自己顕示を素直な形で表現することができない。だから捻くれた形での自己表現しか出来ない。Facebookは、素直じゃないがゆえに鬱積した感情が、彼の技術に対してぶつけた結果だとも思えます。そのぶつけた力が、世の中の面白さの原動力となり、最初はハーバード大だけ、次第にアメリカ国内の大学だけでなく海外の大学まで波及し、果ては社会に浸透する。それだけならいいとしても、結局のところ会社を運営するのは人であり、人は気持ちなくして動くものではありません。機械ではありませんから。

日本では、mixiやGREEが主流のソーシャル・ネットワーキング・サービス。しかし、それを利用しているユーザは、いったいどこまで自分の本当のことを公表しているのでしょう。そして、利用者は、いったいどこまでがその人の本当の情報だと思っているのでしょう。
まるでそれは、主人公を取り巻く周囲の人こそが、ソーシャル・ネットワーク内の嘘と虚栄に塗り固められた人物のよう。『天才』も『裏切り者』も『危ない奴』も『億万長者』も、彼の周囲を表しながら、それがそのまま彼のソーシャル・ネットワークとして形成されているようにも見えます。

現実世界とネット(仮想)の世界。一見すると、現実世界には本当(リアル)が目の前に現れるが、仮想世界は、それが本当のものかどうかは分からない。多分、嘘の情報が多いかもしれない。しかし本作の描写は、まるで、本当と嘘が逆転しているかのような錯覚も受けます。実際のところ、本作でなくても現在の世界も同じようなことが表れているようですが… いずれにしても、彼が本当に臨んだ姿とは、かなり違った形で成長したのでしょう。
彼にとってそれは、進化と呼ぶべきか退化と呼ぶべきか。多分きっと退化なのかもしれませんね。それは、彼のラストの描写が、物語っていると思います。

終始、会話が早くて聞くだけでは疲れてしまう作品です。途中まで観て、「あー、失敗したかな」と思いましたが、後半の展開を観て、なぜあれだけの賞を受賞し、またノミネートされたかの理由がわかりました。
一人の若者の、それを取り巻く若者の、成長と挫折と本当の臨むことが織り成す物語。あまりIT関係の難しいところに傾倒せず、登場人物の心の描写を鑑賞する作品だと思います。

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2011/01/25 22:50 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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