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2024/04/20 13:12 |
[Review] アンストッパブル

アンストッパブル事の発端は、整備不良と操作ミスからなる人的行為。『それ』単体から見れば、実に取るに足らないこと。けれど、その『取るに足らないこと』が、その後、思わぬ事態を招くことになる。「まぁ、こんなもんでいいかな」という安易な考えが、大災害に発展することだってある。
身近なことから国家管理に至るまでのあらゆる『些細な人的行為』を、僕はこれまでたくさん目の当たりにしてきました。それによる損害は、単に口頭注意で終わるものもあれば、損害賠償にまで発展するものまで、「こんなもんでいいかな」という考えが招く、自分だけでなく他者の一生をも巻き添えにしてしまうほどの事件・事故。この作品は、2001年に実際に起こった貨物列車の暴走事故を元に作成されたものです。

この作品で分ったことは、乗用車であれ列車であれ、巨大でパワーのある鉄の塊は、運搬の世界においては強大な文明の利器になりますが、

使い方を誤れば、もはや手の施しようの無い凶器になる

ということ、につきます。たかが鉄道、されど鉄道。動力が完全な電気ではなくディーゼル機関車なので石油燃料も使用されていること、機関車は馬力が肝心。それに加えて力行となり速度が上昇、もはやそれだけでもリーサル・ウェポンなのに、運搬物が毒性の強い溶解フェノール。万が一を考え脱線計画を試みるも、暴走列車の行く先は郊外の市街地。そんなところで脱線させれば、鉄道会社や薬品会社の損害云々の話ではなくなってしまうのは言うまでも無く。
結果として、死者や損壊が発生したものの大惨事には至らりませんでした(映画では死者が出てしまいましたが、実際の事件では死者は出てないんだそうです)。


この作品でのポイントは2つ。

1つ目は、見慣れた、見知った、身近なものでも、視点を変えれば、身を震え上がらせるほどの凶器になり得る、ということ。
乗用車にしても鉄道にしても、今にも身体がもぎ取られるくらいのギリギリの感覚で見ることなんて滅多に無いはず。しかしこの作品では、まるで『鉄道 = 凶器』とでも言わんばかりの描写の仕方をしています。勿論、「鉄道は凶器です。生命を奪うものです。皆さん、鉄道に乗ってはいけません」なんていうことを主張しているわけではありません当然ながら。しかし、『文明の利器』という視点のみで見ていると、その表裏一体として見え隠れする、いや、「本当は見えているもの」が見えなくなります。むしろ、『文明の利器』を追いかけるあまり表裏一体の凶器の面を、「見て見ぬ振り」にされてしまうことが多いのではないかと。
これは鉄道に限らず、様々なものにも当てはまります。人間が作ったものは、決して『便利さ』というプラス面のものだけが存在することではない、ということです。

2つ目は、たとえそういった事件・事故が起こった時に解決できるのは、やはり人間だということ。人間が『文明の利器』を作り、その『文明の利器』に潜む『凶器』を作り出しても、その解決をするのは、やはり後にも先にも人間だということ。
それも、知恵と力と勇気を振り絞って立ち向かう、ということ、それぞれがそれぞれの出来ること、やれることの範疇で、最大限のことを成すこと。
そりゃ、理想は己の力の120%を引き出して死に物狂いで頑張れー! なんて出来ればかっこいいかもしれませんが、今作に登場する人は、別に特別な能力を持ち合わせているわけでもない、普通の人達。家族もいるし、ちょっとワケアリの人生を送ってそうな人達だけど、何もかもが普通の人達。そんな人達に、「5分後にスーパーマンになって」なんて言える筈もないし出来る筈も無い。
でも、彼等は成し遂げた。結果的にだけど。でも、彼らの考えうる頭と能力を使って。出来る限りのことを。知恵を絞って、乗り切ったこと。それもまた特別なことじゃない。どんな人のどんな人生にとって、全てに共通していることだと思います。
出来すぎだとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それでいいのです。それがドラマなのですから。


今でも僕は、過去の妄執や確執にとらわれて、未来すらも黒いドロドロした得体の知れない『何か』に飲み込まれそうな、そんなことを思います。そんな底なし沼に、きっと死ぬまで立ち泳ぎでもしなければならないかもしれません。
でも、たとえそれが形式的なことであっても、単なるその場しのぎであっても、『自分が出来ること、自分がやれること、能力の限りを最大限に』を念頭に置きながら、頑張っていけたら、と思います。

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2011/01/16 23:51 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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