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2024/04/19 23:41 |
[Review] オール・ザ・キングスメン
オール・ザ・キングスメン原作は、ピューリッツァー賞に輝いたロバート・ペン・ウォーレンの小説『すべて王の臣』。1949年にロバート・ロッセン監督によって映画化されたこの作品は、今作で2回目の映画化。
第2次世界大戦の終戦間もない1949年のルイジアナ州は、大企業との汚職にまみれ、富裕層と貧乏層との間に異常なまでに格差があった。その汚職を浄化すべく立ち上がった一人の男、ウィリー・スターク。一人の出納官に過ぎなかった彼が、やがて州知事に昇り詰めるも、やがて彼も権力に溺れ、腐敗に陥る。そんな彼を、傍らで見つめてきた新聞記者。この物語は、新聞記者である彼が見た、ウィリー・スタークの絶頂と凋落の物語といっていいのかもしれない。
いや、ウィリー・スタークだけではない。彼と、そしてウィリー・スタークに関わった人間全ての物語。『地方自治』の名の下に穢された手、身体、そして名誉。支払ってきた代償。裏切りの数々。

享受する人民は、誰一人、その裏舞台の汚れと憎しみの交錯を知らない     


大きなことをしようとすればするほど、その代償となる対価は大きく膨らみ、やがて正義の為に立ち上がった一人の知事の双肩でさえ、支えきれなくなる。何らかの『力』が作用すれば、それに対し反作用を起こす『力』もまた存在する。全ての『力』が自分の為になるとは限らない。自分を活かすとは限らない。やがてその『力』は両の肩からこぼれ落ち、多くの人々を巻き込む事になる。
誰もが傷付かない政治なんてあり得ない。誰もが幸せになる政治なんてあり得ない。多くの幸せのその真下には、血塗られた憎しみの渦が、今も人々の『幸せ』を付けねらうかのように、横たわり、眠り、そして機会を待っている。

そして発動された渦は、自らを封印した元凶に襲い掛かる。
もう元には戻れないと知っていても。


誰かの願いを叶える為に、誰かを犠牲にする」。

僕達の日常行動は、それで成り立っているということを、一体どれだけの人が噛み締めて生きているのだろうか。犠牲になる方は辛いのは勿論だが、犠牲にしなくてはならないと苦虫を噛み締める統治者もまた辛い(作中のショーン・ペンが扮するウィリー・スタークは、そんな表情は殆ど見せなかったが)。
しかし、「誰かの願いを叶える為に、貴方が犠牲になりなさい」と告げる者は、もっと辛い。
自分の中にも信念が、正義があるのに、それに反する事を言わされること。その対象が、自分と近しい人物であればあるほど、その傷は深く心を抉る。人々の生活の為、弱者を救う政治を作り上げる為とはいえ、今まで作り上げた『幸せ』を、たったの一言で壊すことになるのだから。

多くの人々を救う事と、自らの正義を貫く事。
その『力』を、誰の為に、何の為に使うのか。多くの人の為の正義と、自分の為の正義が問われる作品であると思う。

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2008/01/05 11:49 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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