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2024/11/27 18:37 |
[Review] エリザベス:ゴールデン・エイジ
エリザベス:ゴールデン・エイジ冷たく無機質な石の鳥籠。そこが女王の住まう城。
大きく広げる翼があるのに、どこまでの飛べる翼があるのに、決してその鳥籠を出ることは出来ない。すぐそこに、見果てぬ世界がある。女王が焦がれて止まない、広い世界。しかし、求めようと手を伸ばしても、時代がそれを許さない。迫り来るのは、国を脅かす敵。「自分たちが正義」と信じて疑わず、自分たちの『正義』の名の下に、他者を圧し、平伏させる、当時のヨーロッパ最強の敵。
でも、怯えて逃げるわけにはいかない。国を統べる、女王なのだから。

そして、敵は外側からだけではない。鳥籠の中にも、女王の地位と生命を脅かす敵が、掃いて捨てるほど蠢いている。女王自身はプロテスタント。故にカトリック勢力からたびたび暗殺の危機に晒される。さらには、もう一人の王位継承権を持つ者。今は幽閉されている身だが、いつ女王の寝首をかくか分からない。カトリック勢力と結託することによって、女王を引き摺り下ろそうともしている。
そうでなくとも、かしずく臣下は、皆自分を取り入れようとおべっかばかり。変わらない言葉。退屈な言葉。でもそうそう心を開かない。心を休めない。いや、開く暇など、休める暇など無いのだ。

美しく、気高く、そして一国を統べるに相応しい翼を持つ女王。
しかしその裏には、決して人には見せられないほどの傷を負っている。
弱さを見せない女王。それ故なのだろうか、その身を委ねる伴侶がいないのは。


ケイト・ブランシェットが演じる二度目のエリザベス1世。
1998年公開の映画『エリザベス』では、異母姉のメアリー女王を幽閉から、カトリックとの対抗権力に対する粛清を描いています。今作『エリザベス:ゴールデン・エイジ』では、主軸はカトリックとの宗教対立でありますが、その相手は、当時無敵艦隊を誇った最強の国スペイン。様々な政策を打ち出し、自国が誇る戦艦や長距離大砲を駆使し、見事アルマダ海戦の勝利をもぎ取ります。勿論、それは海の荒波や嵐の助けもありますが。
彼女が、その気高い翼を存分に発揮した瞬間。大いなる羽ばたきによって、外敵を退けた瞬間。
しかしそれでも、傷ついた翼を休めることなく、そしてその傷を誰かと分かち合うこともなく、女王として、国民全てを包み込む。自身も、その身を誰かの翼に包まれたい、寄り添いたいと密かに思っているのに。

これまでも、『公人の人間性』を描いてきた作品が公開され、そして鑑賞してまいりました。
まるで鳥籠の鳥ように自由が利かない、というのは、ヘレン・ミレン主演の『クィーン』やキルスティン・ダンストの『マリー・アントワネット』でも同じ感想を持っています。質は違いますけれど。時代が全く違いますし、何より、単に年代が、というわけではなく、その時の情勢や、人々の関心の持ち方が全く違うからでしょう。
その中でも、とりわけエリザベス1世を悩ませている苦痛は、視界に入るもの全てが『敵』に思ってしまうこと。女王自身が望む望まないに関わらず。どこまでも羽ばたく大きな翼を持っているのに、迫り来る『敵』と、その『敵』から国と国民を守るという責任という名の錘が、自身の飛翔を封じている。
王は国のために、私情の全てを犠牲にするのは、何も今に始まったことではなく、これは、有史以来、どこの国でもある連綿と続いているものなんでしょう。もはや、王家に生まれた、もしくは王家に嫁いだ『呪い』とでも言うべきでしょうか。

しかし、エリザベス1世の素晴らしいは、その大いなる翼の使い道を決めた、そしてその決めた先が、国を救った、ということ。その凄まじさは、豪華絢爛さ以上に圧倒されました。ケイト・ブランシェットの演技ならではなのでしょうか。


荘厳で、気高くて、偉大で、でもところどころ傷だらけの翼を持つ女王。
女王として最後まで覚悟し、生き抜く彼女の、壮大なる生き様が描かれている、圧倒される作品です。

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2008/02/17 00:15 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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