「ここが、サンタさんの国?」
新幹線の同じ車両に乗車していた子供が、その両親に問いかけた質問。それもそのはず。窓の外に見える景色は、土も、木々も、一面の白。青く澄み渡る空だけが、色を留めているかのよう。
東京から来た、まだ幼稚園に行くか行かないかの小さな子供にとって、一面が雪の世界は初めてかもしれません。何しろ僕も、積雪が1mを超えるような世界は、未だテレビや写真の世界でしか見たことがありませんでしたから。
秋田県仙北市。江戸時代の武家屋敷の面影が今も残る、角館へ行ってまいりました。
前述の通り、この目で実物を見るのは初めてなんです、腰の高さを更に上回る積雪量って。日本の冬独特の季節が作り上げる景色とはいえ、よくぞここまで積もるなと感嘆してしまいました。何と言っても地層ができてますし。
しかし、そんな積雪でさえも、地元の人にとっては例年に比べ少ないんだとか。多いときでも4~5mは積もるという雪。簡単に1Fは雪で埋もれ、すごいと時だと2Fの窓にも達してしまうんですね。
雪といえば、この日は近畿東海、そして関東でも、まとまった雪が降ったそうで。1週間前の2月3日の大雪ほどにはいかないものの、例年になく降る雪の量が多い気がします。東京ではたった5~6cmの雪でも交通機関が麻痺するのに、角館ではもはや当たり前のこと。まぁ、この地方の大雪は今に始まったことではありませんけれど。何よりも交通量が東京と違いますからっ。東京の交通量で、腰の高さまでの積雪があったら、数日間足止めされますよ!
そしてこの季節、降れども降れども止まない雪の季節のはずなのに、雲一つ無い晴天。地元の人手さえ、こういう日は珍しいんだとか。今回僕は、トレッキングに防水スプレーと、およそ雪の中を歩く準備に程遠い格好なのですが、快晴の中での散策であれば、これはこれでありかもしれません。予測していたわけではありませんけれども(汗)。
角館の散策は、何と言ってもまずは武家屋敷から。
過去に旅行に行った薩摩の小京都・知覧と同じく、江戸時代の趣を残す武家屋敷の町並み。道を外れたところは、もう今風の閑静な住宅街になっておりますが、屋敷の中に入れば、まさしく武家のお屋敷ならではの厳格な雰囲気が漂っています。普段は青々とした緑と、存在感を露わにしている庭石が鎮座しているのでしょうけれど、ここも一面雪化粧。しかし雪に染まる、ではなく、雪に埋もれる庭園というのも、割といいかもしれません。凍て付くけれど澄み渡る空気と、音の無い世界が、眠れる世界を形作っています。
知覧と大きく違うところは、屋敷の中も拝観できる、ということ。勿論、全ての屋敷がそうではありませんが。
中の展示は、江戸時代(恐らくそれ以前より伝わる)武家の武器や道具から、明治~大正~昭和にかけての道具や遺品の数々。中には、現代の電化製品の礎ともなった、蓄音機や写真機、そして時計といった機械仕掛けの展示物も。中にはかなり古いレコードまで展示されていまして。
調べたところによると、青柳家は明治時代、角館経済の中心だったとか。元々、角館は蘭学が栄え、西洋の医学『解体新書』でもお馴染みの地。世界中の最先端の技術の取り入れる環境としては、それほど違和感の無い土地柄だったのでしょう。無骨な刀剣や鎧だけでなく、こんなレトロな、古きよき時代を彷彿させる展示物というのも、趣向が変わっていますが、とても面白いです。
さて、この角館観光、目的が割とカチッと固まっているのであれば、サクサクと歩いても1日で回れてしまいます。
これで終わりなのか、と思ってしまいましたがそれは大違い。角館は、昼の楽しみもあれば、夜の楽しみもあるのです。勿論、それは温泉もあるのですが。そんな僕も、この夜の楽しみは、ホテルの掲示板を見るまでは全く分かりませんでした。この日、『白岩城址燈火祭』が行われるということですので、ちょっと足を伸ばして行ってみました。
田んぼに広がる150もの雪のかまくらで作った灯篭。山に煌めく炎の灯り。
えーっと、確かに綺麗なんですけど、
すっげぇ排他的な結界を感じるわ。
きっとこのお祭りは、町の人の町の人による町の人の為のイベントなんでしょう。一応PRはしているものの、どうやら仙北市内向けですし(ネットでもあまり全国向けのイベントとして大々的にPRはしていなさそう…… 残念)。それでもイベントと聞きつければ訪れる観光客もいるようで、劈くような寒い中、カメラを持って煌めく燈火の撮影をしていました。
正に内輪尽くしのイベントでしたが、燈火の他にも見れて良かったとおもったのが、『火振りかまくら』。この地方ならではの、小正月を祝う伝統の行事。勢いのついた炎をブンブン振り回す姿はスゴイ! 凍て付く寒さなのに、忘れてしまうくらいの熱気が篭っていました。
冬の季節だけの、それでもあまり目にすることはない行事を見ることができて、大満足の一日でした。昼だけで回りつくせても、以外にも夜に、まるで掘り出し物のように輝きを放つイベントを巡る事ができて、って、実はあと1日遅かったら見れなかったということに!?
公共の施設の掲示板って、結構見ていくもんだな、と思いました。
夜は温泉に浸かり、地元名産、比内地鶏の親子丼を堪能。そういえば本の少し前に、賞味期限の偽装問題として挙げられていたような…… まぁいいや。おいしいので文句ありません。
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まさか、実行委員の方からコメントいただけるとは思わず、恐悦至極と共に、個人的とはいえあまりにもズバズバした意見にもかかわらず受け止めていただいて、大変恐縮です。
確かに、アクセスや敷地面積、実施時間等を考えると、大々的にPRをするのは難しいかもしれません。ですが、闇夜に浮かぶ燈火はあまりにも綺麗で、つんざく様な寒さをしばし忘れさせてくれました。
これからも、たくさんの人で賑わえるような祭りにしていただければと思います。
>貴重なご意見ありがとうございました。観光客、地域外の方々にも楽しんでいただけるよう当日白岩の歴史を説明する係りを設けること等 検討しております。まだまだ課題はたくさんありますが頑張って前進します。ありがとうございました。