宇宙を舞台に、人類と地球を侵略しようとする地球外生命体との戦いを繰り広げる、その後のSFアクションアニメの先駆的存在となった作品の実写映画です。本格的なVFXの技術を動員し、ハリウッドのアクション映画に比肩する作品としての前評判をちらほら耳にしたものの、公開前のCMで、日本の都市の上空にヤマトが飛んでいるシーンのあまりの違和感から、それほどの期待を寄せずに観賞しました。
そしてものの見事に、その寄せなかった期待がドンピシャ。
色々なところで、SF云々以前のツッコミどころ満載なのです。
宇宙空間で繰り広げられる、地球外生命体『ガミラス』との、息もつかせぬほどの戦闘シーン。
あまりにも動きが素早すぎて、しかも砲弾もこれでもかというくらい打ち込みすぎて、双方の位置関係や情勢が分かりませんでした。後々になって何とか目で追えるようになったものの、慣れが必要かもしれません。
打って変わって、ヤマトの内部のシーン。
息もつかせぬVFXとは真逆の、昭和の特撮戦隊ものによく見られる、貧相な合体ロボのコクピットみたい。戦闘シーンやヤマトの外観も、それこそリアリティを出し切っているとは思えないけれど、それでも実写ということから、丁寧に作られているのは分かります。『ヤマトが主人公』なら尚更のこと、外観はもちろん、内部もリアリティを出し切るくらいの作りが欲しいと思いました。このあまりのギャップの差に落胆を禁じえません。
ガミラスとの戦闘シーン。
事前に自衛隊に武器の取り扱いについて訓練を受けたらしいのですが、敵に銃口が向いていません。日本が銃社会でないことが、良かれ悪しかれ、『銃を使って敵を攻撃する』というを演じるところに、リアリティを引き出し切れていないところが感じられます。乱射すればいいってものでもないし。
あ、でも、アナライザーのシーンには迫力があり、目を引きました。
キムタクはやっぱりキムタク、というご意見の方も多く見受けられます。まぁ、彼は彼の演技のポリシーによって、キムタクという人格を踏まえた『古代進』というキャラクターを演じたのかもしれません。
しかしそれ以前に。乗組員が揃いも揃って隙だらけ油断だらけってどうなのよ!
人類の命運も、もって1年足らず。確証も何もない僅かな情報を頼りにイスカンダルへ航行するも、予定通りに到着するか、目的のものを入手できるかも分からない。ましてや、襲撃するガミラスの特性もほとんど掴んでいない。そんな勝率1%にも満たない、一か八かの賭けのような航行なのに、
敵の襲撃を受ける → 撃退する → 皆で喜ぶ → 油断する → 予期せぬ敵の襲撃を受ける
普通の軍隊じゃあり得ませんよこれ! 戦いの場から一旦離れて和気あいあいと仲間と時間を過ごすことはあっても、粛々と任務をこなしている間に、敵の存在や攻撃の有無を見落とすようなことは絶対しないと思うのです。
アニメだったらよかったのかもしれない(いや個人的にはよくありませんが)。でも今作は実写です。アニメとは違う、実写ならではのリアリティと表現力がもう少しあってもいいのではないのでしょうか。たとえそれが、原作のメインストリームから少々逸脱したものであったとしても。
ギリギリのラインで人事を尽くして、それでも完璧に作戦を遂行できるとは言いがたい。常に緊張と絶望感のプレッシャーに飲み込まれそうになりながら、ナイフのエッジ上を血だらけになりながら歩くがの如く。そこまでしても、最後の最後には逆転劇すら許されない状況に追いやられる。
個人的には、地球の命運をギリギリの賭けの中で握る物語であればこそ、リアルに描くことができるのではないかと思います。が、そんな状況下であるにもかかわらず、ほぼ全員に無駄ともいえるような余裕が散見されることに、残念な気がしてなりません。
まぁラストのシーンと言ったら、リメイク版『日本沈没』とか『アルマゲドン』とかと同じ。やっぱり地球と人類を救う運命を背負った主人公は、似た結末なのね。。。 と思いました。