忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2017/10/19 17:52 |
[Review] 太陽

太陽「神が人間であることは許さない」
「神が人間になることを認めない」

人は、弱くなればなるほど、神を必要とするから。
しかし、有史以来、神として崇め奉ってきた人物も、同様に人間だった。
同じように言葉を操り、同じように夢を見、同じように血を流す人間。

生まれた時から、自分は神。
放棄することも、弱さを見せることも許されない、神。
神として生まれてきたが故の『呪い』。周囲は、恐れ多く静謐に彼を敬う環境は、彼にとってみれば、それは狂気の坩堝。どれだけ自分が『人間』だと言っても、誰も彼を『人間』だとは認めない。

だから、彼は呟く。
「誰も私を愛していない。皇后と皇太子以外は」 と。


時代劇や大河ドラマ、ハリウッド映画では『ラストサムライ』など、天皇という存在は、幾度と映像に登場してきました。時に人々を導く皇帝として。時に人々を脅かす恐帝として。
しかし、どれを観てもその姿は公に登場する姿のみ。限りなく『触れえぬ存在』として描かれた天皇の姿。それは人間宣言をする前の昭和天皇であっても同じことでした。

けれども、彼は『人間』でいたいと思った。勿論、それはこれまでの皇室の歴史を根底から覆すための思いじゃない。彼はそこまで強くなかった。何千・何万という、自分の国の民の死を目の前にして、悠然と『神』としていられるほど、彼は強くない。いや、むしろその方が、彼にとってみれば弱いのかもしれない。
『神』としてい続けることの方が弱いのか。『神』あることを辞め、『人間』であることを選択することの方が、ある意味逃げなのではないのだろうか。
日本史上最多の日本人が没した時代に生きた天皇。朝眼が覚めても、夜床に就いても、目の前に現れるのは、『狂気』。天皇という舞台に上がってしまった者の運命。自分で選んだわけでもないのに。皇族に生まれた自分。選ばれたんじゃない。『選ぶ余地が他に無かった』。


この映画には、皇后やマッカーサー元帥をはじめ、色々な人物が登場します。終戦直前から人間宣言までの間、いわば、疲弊のどん底に落とされた日本社会を描いています。
住むところも、着るものも、食べるものすらも無い世界。そんな中でも、昭和天皇はあまり自分のペースを変えず、極端な話、飄々と生きています。表向きは、ですが。
それでも、彼の苦悩は絶頂に達していたでしょう。周囲の人物も、まるで過剰というくらい昭和天皇を崇めているのは、拠り所が必要だから。一見、苦しそうに見えても、何かがあれば、縋れる存在がある。それが『神』。この映画の大半が昭和天皇を映しているから、かもしれませんが、周囲の人物に、心の底からの『苦悩』があまり見られません。『神』が何とかしてくれる。『神』がいれば大丈夫だ。

だから。
「神が人間であることは許さない」
「神が人間になることを認めない」


ほとんど音も無く、セピアに満ちた静寂さの中で進行する、でも、ひと時も眼を離すことが出来ない、常に固唾を呑み続けるような映画です。戦争映画でよくある、戦時の状況説明は一切というほど存在しない。だからこそ、昭和天皇という一人の『人間』そのものを、観ることが出来ると思います。

貴方は、この映画の昭和天皇を、どのように感じ取るのでしょうか?

拍手

PR

2006/08/21 23:14 | Comments(0) | TrackBack(8) | Review - Movie

トラックバック

トラックバックURL:
単館系での上映のこの映画は観よう観ようと思っていたら終わってしまった作品です。日本では絶対出来ないテーマ「昭和天皇」を描いたこの作品はなんとロシアで制作された。淡々とした中にも、どこか浮世離れした生活した感じがはっきりとわかる。昭和天皇を演じるのはイッ...
THE脂肪| 2007/09/06 18:26
八月になると、広島・長崎の原爆記念日や終戦記念日が毎年やってくる。 ひらりんは勿論、戦後生まれ・・・ 昭和天皇の終戦時の話は、なかなか知りえないので、 映画を通して、記憶に残しておこう・・かなっ。
ひらりん的映画ブログ| 2007/08/23 03:45
今発売されている「文芸春秋」の5月号は、新発見「小倉侍従日記」を読み解く、として、「昭和天皇孤独な君主の闘い・陛下はやはり騙されていた」というセンセーショナルなタイトルで、阿川弘之と半藤一利の対談が載っているようです。たまたま通りかかった駅の売店の店
とんとん・にっき| 2007/05/13 18:25
カテゴリ : ドラマ 製作年 : 2005年 製作国 : イタリア スイス フランス ロシア 時間 : 110分 公開日 : 2006-08-05~ 監督 : アレクサンドル・ソクーロフ 出演 : イッセー尾形 佐野史郎 桃井かおり 田村泰次郎 六平直政 1945年8月。その時、質素な身なりをした昭和天皇ヒロヒトは、地下の待避壕か、唯一被災を免れた石造りの生物研究所で暮らしていた。宮殿はすでに焼け落ちていたのだ。 続き 不可思議なヒロヒトを、日本人よりも...
サーカスな日々| 2007/05/04 17:22
満 足 度:★★★★★★★★★        (★×10=満点)  監  督:アレクサンドル・ソクーロフ キャスト:イッセー尾形 、       ロバート・ドーソン 、       佐野史郎 、       桃井かおり 、       つじしんめい 、     
★試写会中毒★| 2006/11/18 18:28
あの本当にすごいヒトラー映画『モレク神』を世に放ったロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフ監督が、その連作として昭和天皇と戦争を題材にとり、しかも主演にイッセー尾形を起用したと聞いたとき、正直かなり不安でした。 鬼才といえど何かしら勘違いをして、日本人か..
~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録| 2006/10/21 11:58
天皇ヒロヒト――彼は、悲劇に傷ついた、ひとりの人間。 その苦悩 その屈辱 その決意 彼は、あらゆる屈辱を引き受け、 苦々しい治療薬をすべて飲み込むことを選んだのだ。
ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!| 2006/10/10 20:54
邦題:太陽 原題: 英題:THE SUN 監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演
Pocket Warmer| 2006/08/22 19:25

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<Prince of Handkerchief | HOME | [東京] 英霊の廟>>
忍者ブログ[PR]