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2024/04/24 12:49 |
[Review] ワールド・トレード・センター

ワールド・トレード・センターいつもと同じ朝。穏やかな朝。一日の始まりに、人々はせわしなくニューヨークの街を行き来する。とりたて面白い出来事はなく、ごくごく普通の光景。明日も、明後日も、こんな朝が、ずっと続くと思ってた。

『あの時』が来るまでは     


『ユナイテッド93』は、管制塔や機内を舞台に、最初は小さな漣だったのが次第に大きくなり、やがて大津波が全てを飲み込むように世界を暗転に引きずり込むのに対し、『ワールド・トレード・センター』は、息をつく間もなく突然世界が暗転してしまいます。ただ、当時のニューヨーク市民にとってみれば、大多数がそうだったのでしょう。徐々に闇が迫るのではなく、次の瞬間、全く光を感じなくなってしまったかのように。

そして、ワールド・トレード・センターに残された人を救うために、多くの人が死を覚悟で、炎上するビルの中に突入します。悲劇は、その直後に起こります。


僕が『9.11事件』をニュースで見て痛感したのは、世界を揺るがした大惨事と同時に、自分自身の無力さ。何も出来なかった自分自身。勿論、粉塵と炎が渦巻く現地で、自分に出来る事なんてほんの一握り、どころか、多分皆無かもしれないけれど。でも、正に当時ニューヨークで暮らしていたご家族の人々は、僕など程遠いくらいの辛さや苦しさに苛まれていたのでしょう。
目と鼻の先で、自分の大切な人が助けを求めているのに、自分は何も出来ない。今にも死んでしまうのかもしれないのに、ただ待って、無事を祈るだけ。
自分の無力感に打ちひしがれる想いは、察するに余りあります。

そして、ワールド・トレード・センターの瓦礫に生き埋めにされてしまった湾岸警察署の署員。光は殆ど無く、身動きが出来ず、体力はどんどん消耗するばかり。最初は数名の生き残りがいても、最後まで残ったのはたったの二人だけ。ただ意識を留めるだけでも精一杯なのに、容赦なくビルの崩壊の余韻が二人に襲い掛かる。
すぐそこまで迫っている、死の恐怖。

死ぬのが怖い。それでも、家族のために、仲間のために生き抜かなければ。
待つのが怖い。それでも、帰りを信じて待ち続けなければ。

そんな想いが、二人を救出に導いたのではないかな、とも思うのです。


どんなに願っても、どんなに後悔しても、『あの時』は戻らない。
あの惨事より前の情勢に、戻ることは、もう無い。
多くの亡くなった方々の命も、もう戻らない。残酷なほどに、時は流れる。

でも、戻らないからこそ、これから『先』を、精一杯生きなければ。
たとえ生き地獄で死の淵に立たされても、神に『生きること』を与えられたのだから。

割と政治色の強い作品を輩出してきた、オリバー・ストーン監督の作品ですが、この『ワールド・トレード・センター』では、そういった政治的な動きや、背後に蠢く陰謀といったものは、一つも出てきていません。
当事者の証言等を元に、当時の状況を限りなくありのままに表現した、当事者視点のドキュメンタリードラマ、とでもいうのでしょうか。

ですので、この映画は、やはり『生への渇望』とか『待ち続けることの辛さ』、『信じることの強さ』といったことが重点的に置かれています。その題材に『9.11同時多発テロ』の実話を使用している、という印象があります。
「『9.11同時多発テロ』そのものの悲劇」を想定している方にとってみれば、若干肩透かしを喰らうかもしれません。


しかしそうであっても、『人間の強さ』というのはひしひしと伝わってきます。
二人の署員が生き埋めになっているところを発見してからが凄かった。まるで、周りの人たちに一気に生気が漲り始めてきたかのような。
アメリカ礼賛的な部分も多少はありますが、それでも、大惨事を前に呆然と立ち尽くすしかない人間の『弱さ』と、希望が見えてきた時に発揮される人間の『強さ』のコントラストが印象深い映画です。

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2006/10/07 23:21 | Comments(1) | TrackBack() | Review - Movie

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コメント

初めまして。「気まぐれ961部隊!」のコレコ(仮)と申します。
「ワールド・トレード・センター」のTB、ありがとうございました。
こちらからもTBさせて頂きましたので、よろしくお願いします。
こちらの作品は、同じく『9.11』のテロを題材にした「ユナイテッド93」とはまた違った怖さがありましたね。
あの事件が起きてから、まだたったの5年しか経っていないのですから、事故に巻き込まれた方やご遺族の方の苦しみは、私などからは想像できないくらいのものだと思います。
このような悲劇が二度と起こらないように、心から祈りたいと思います・・・。
posted by コレコ(仮)URLat 2006/10/08 17:29 [ コメントを修正する ]
Re:無題
初めまして。ご来訪・コメント・TB有難うございます。

この映画は、同時多発テロの恐怖や悲劇ではなく、人間としての『強さ』と『弱さ』を強調している作品のように感じました。
社会派の作品を多く輩出している監督が、人間の感情に訴えかけるような作品というは、確かに弱腰ではあるけれども、まず、事件の裏側で蠢く陰謀より先に、真実を元に『人間の根幹にある強さ』を綴っていこう、という意思があるように思いました。

ご遺族の方々にとってみれば、忘れたくて仕方が無い出来事ですが、それでも、社会からこの事件の記憶が抹消されたくない、そのためにも、何とかして形に残さなくては。
その想いも、この事件を通して得た人間の『強さ』なのでしょう。
2006/10/08 18:31

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