『公益通報者保護制度』というのをご存知ですか?
大まかに言えば、内部不正を通報した人が、正しい行いをしたのに不当な扱いをされないように保護する法律です。
諸外国でも同様の法律が数多く制定されているように、昨今の犯罪は、外からの攻撃より内側からの侵食の方が多いのです。たとえ外部からの攻撃であろうとも、内部からの手引きがあったり、とか。
日本でも、自動車のリコール隠しから食品の偽装表示、果ては機密情報の漏洩に至るまで、内部による犯罪は大きく取り上げられました。ましてや、一国を動かす要人を狙う犯罪に至っては、「厳重に警備する」くらいですら生易しいのでしょう。基本的に、不用意に近づく人間は敵とみなす。内部関係者も、原則信用してはならない、みたいな。
けれど、もしそのような組織でさえも、内部関係者による犯罪が起こったとしたら ?
物語は至ってシンプルでした。
大統領暗殺を画策する情報。それがシークレット・サービスにより仕組まれた陰謀だということ。関係者全員に対しポリグラフ(嘘発見器)をかけるが、疑わしい結果が出たのは何と主人公。
濡れ衣を着せられた主人公は、容疑者として追われながらも自身も真の犯人を追及するために奔走する。一体誰が、大統領暗殺を企てようとしたのか?
と、一見すると『Mission: Impossible』のような展開ですが、変な小細工や所々に散りばめられた真実に導く要素はあまりありません。サスペンス仕立てではあるけれど、推理力を働かせずに素で観ることが出来る映画です。
ただ、展開があまりにも速いので、それこそ本格サスペンスの要素がテンコ盛りの映画に仕上げると、きっと殆どついてこれる人はいなくなるのではないか、と。そういう意味では、展開の速さに丁度いいくらいのシンプルさだったと思いますが、やはりサスペンスを楽しみたい、という人にとってみれば、ちょっと物足りなかったのかも。
マイケル・ダグラス扮するピート・ギャリソンと、キーファー・サザーランドが扮するデヴィッド・ブレキンリッジの不仲のエピソードも、とりあえずちょこっと出してみました程度で終わってしまいましたし。
ハラハラしましたし面白かったのですが、先の展開が読みやすいですし、若干不完全燃焼気味の映画でした。でも観やすい映画であることは確か。