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2024/03/29 22:20 |
[Review] ライラの冒険 黄金の羅針盤
ライラの冒険 黄金の羅針盤ライラの冒険シリーズ第1弾『黄金の羅針盤(The Golden Compass)』。
大抵のファンタジー作品といえば、完全に独立した御伽の世界、もしくは現実世界と同じ空間でありながら魔力を持つ者・選ばれた者しか見ることも行くこともできない『シームレスだけど独立した世界』というのが主流でした。前者でいえば『ロード・オブ・ザ・リング』、後者でいえば『ハリー・ポッター』シリーズや『スターダスト』といったところでしょうか。
異なる世界を行き来する、という意味では、『ナルニア国物語』シリーズもそうですね。しかし、この作品はどちらかというと、『パラレルワールド』というよりかは、『本の中』とか『御伽草子』の世界と現実世界とを行き来している、というようなイメージ。少なくとも、ナルニア国を救う運命にある4兄弟が住まう現実世界と、ナルニア国が、『並行』して存在する、という感覚はありません。そういう意味であれば、「パラレルワールドを行き来すること」を実写の映画として制作した映画は、この『ライラの冒険』が初なのかもしれません。


さて。この『ライラの冒険』シリーズ第1弾の『黄金の羅針盤』。感想と致しますと、「制作者サイドの苦悩とジレンマがひしひしと伝わる作品」でした。これは、2006年に公開された『ダ・ヴィンチ・コード』を彷彿させるジレンマです。
何故かと言うと、恐ろしく展開が速いのです。日本語吹替え版も同時に公開されるはずですから、子供にも広く鑑賞してもらうのが狙いなのでしょう。けれど、大人でさえ「話の展開がエラくポンポン進んでないか?」と思うくらいですから、子供ですと、もしかしたら何が何やらサッパリ、ということになってしまわないのでしょうか。

原因の一つとしては、やはり『詰め込み過ぎ』に他ならない、と思うのです。例えば、作中である事件が発生し、ライラがそれについて親友と話をするシーンがあるのですが、その『事件』が一体いつの間に出てきたのか。別に観逃しているわけでも無いのに、いきなり彼らのトピックスとしてポッと出てきて、さも「既に観客は皆知っている」とばかりに話をするのです。そういったことが何度か出てきたので、結構戸惑いました。
連続した作品は、何よりも最初が大事。恐らく、今後の展開にも重要になる要素が、これでもかというくらい最初の作品に含まれていたのでしょう。しかし、詰め込み過ぎて説明的な描写に終わってしまっていることに、その後の物語や展開に支障をきたさないかどうか心配です。

そしてもう一つ。ライラの驚くべき順応力の高さ。とても「何も知らない、これから真実を探りに行く」とは思えないほどの。
ライラは、おしとやかとは程遠い、活発で滑舌、度胸があり肝が据わっている、今時男ですら珍しい性格を持つおきゃんな女の子。しかし、そんな彼女であっても、いきなり未知の事柄、未知の世界に遭遇すれば、戸惑うし尻込みをすることだってあるはず。更に、こういった性格であれば、これまで起こっている事柄、自分とその周囲の関係をもっと知りたい、知っておきたいと思うはず。しかしどう観ても彼女の行動は、既に自分の運命を知って、受け入れでもしなければ、これ程までの行動力・順応力は発揮できないのでは、と思うのです。
あまり疑問を持たず、果敢というより無謀すぎるくらいに前進するライラ。それは子供であるが故なのでしょうけれど、「何よりもまず実行」という信念があるからなのでしょうけれど、観客からしたら違和感は拭いきれないと思いました。

そんなこんなで、結構歪みだらけの本作品。多分丁寧に描こうとしたら、余裕で2時間半~3時間の超大作になるはず。それでも2時間弱に収めているのは、前述の通り、子供にも広く見てもらいたいからだと思います(上映が終了した瞬間、「えっ、もう終わり!?」と思ってしまうような早さを覚えました)。さすがに『ロード・オブ・ザ・リング』のような3時間コースは、子供には酷ですし。しかしそれが、かえって作品に無理な端折りや歪みを生じさせてしまった結果に繋がったのでしょう。
まぁ『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』シリーズのような、秘境や魔境によくある粘着質でダークなウジュルウジュル感はほとんど無いので、観易い作品であることは確かです。衣装や建物もゴージャス感があり綺麗ですし、よろい熊の戦いも圧巻です。


そして、やはり3部作であるからか、物語やキャラクター、世界観に至るまでの真相や真実は、ほんの一端しか出てきていません。正に、『黄金の羅針盤』が終了して初めて、スタート地点に立てた、という感覚です。ライラ自身も、そして観客も。
『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』シリーズのように、続き物でありながら単体の作品としても面白いのに対し、この作品は、全ての物語の流れを繋げて、初めて本当の面白さが実感できると思います。これが制作者サイドの意図なのかどうかは分かりませんが。でも、もしそうなのであれば、次回作公開まであまり長いスパンをかけるのは得策ではありません。「連続した鑑賞」が、映画版『ライラの冒険』を楽しむコツなのではないかと思います。

まぁ、こうやって素人薀蓄を並べ立てていても、ちゃっかり次回作を首を長くして待っておりますし(汗)。
ちなみに、『ライラの冒険 黄金の羅針盤』公式ホームページに掲載されている、企画ページ『あなたのダイモンは?』では、ミサゴ(♀)でした。

ダイモンで鷹狩りとかできそう。

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2008/02/23 23:11 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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