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2024/03/29 08:58 |
[Review] ビューティフル・マインド

ビューティフル・マインド「全ての真理を探求したい」

数の世界に生き、数の世界から逃れられない天才は、数の力で真理を探究しようとした。
けれど、本当に彼が求めたい真理は、別のところに存在した。目を凝らせば見えたはずなのに、数の世界しか知らないばかりに、掴みかけた心理を、みすみす指の合間からこぼれ落としていた。
掴もうとしても掴みきれない。真理はするりと逃げていく。目の前にあるのに。
一つの道を極めようとした者が、その道によって、人生の全てを瓦解させてしまうような苦しみを味わってしまう。


実在の人物である数学者、ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニアの、波乱の人生を元に描いた作品であり、2002年の米アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞を受賞した作品です。
天才と狂人は紙一重、とよく言いますが、それは当の天才を赤の他人の目から見た感想です。他人の目からでは狂人に見えていても、本人が受ける苦悩は誰にも分からない。この映画は、天才の半生を描く物語でありながら、観客の視点は、正に当の天才そのもの。観客自身に、天才が見る『幻覚』や『幻聴』を感じ取って、少しでも、天才の苦悩に近づかせる描き方をしています。

今見えているのは、本物なのか。それとも、幻覚なのか。
どちらが本物か幻覚か分からない。
後に説明を受けても、本物は幻覚かもしれない、幻覚こそが本物なのでは。

「分かってもらえたであろうか。天才と呼ばれるが故の苦悩を」
そんなメッセージが、この映画の中で静かに語られています。


『Ray』や『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』でも、その道の成功の舞台裏では、何かしらの影が生じてしまいます。成功『だけ』を享受できるような人生は、その人が有名であれ無名であれ、決して存在しないのかもしれません。
彼らの場合は、築き上げてきた成功を維持し、失敗して皆が離れることの恐れ。目に見えぬプレッシャー。自分が自分であることの強さ、自分が自分であることを他者が認め続ける事を失うことを恐れ、薬物に走った。

稀代の数学者であるジョン・ナッシュは、自分が自分であることを必死に守り抱いていくうちに、統合失調症に陥った。
  「自分は他の奴等とは違う」
  「自分は自分の数という世界で、真理を探究する」
  「それで、他の奴等に自分を認めさせてやる」

目を凝らせば、自分を認めてくれる、自分を愛してくれる人は、すぐ側にいたのに。


彼が一度受けた苦難は、まだ終わりを見ていないけれど、それでも、周囲の人の支えも合って、徐々に『真実』と、『幻覚』を見る自分自身を受け入れようとしていきます。
普通に生活している人から見れば、とても想像し難い苦難の道のりですが、それでも努めて柔らかい波長に仕上げた作品は、観る人の心の温めてくれるのではと思います。

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2006/09/01 22:43 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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