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2017/07/24 05:49 |
[Review] ヒア アフター

ヒア アフターhereafter

[副]
1. この後、今後、将来
2. 来世には
[名][the ~、a ~]
1. 将来、未来
2. 来世



此岸と彼岸を分ける境目として、『三途の川』があると言い伝えられています。ダンテの神曲でも、冥界への境界線として『アケローン川』があると記されています。時代も宗教も大きく隔たりがあるのに、この世のあの世の境界線に、山や谷でもなく、『川』が共通点として描かれているところに、何か人間の死生観の根本に、共通するものがあるように思いました。それが、『水』。生と死の境目の象徴に、『水』の存在をどこかに感じます。
本作は、それを意図しているわけではないとは思いますが、何かを象徴するように『水』が登場します。表情を変える海。南国リゾートの穏やかな海が、突如として多くの生命を奪い、鋭い爪痕を残す津波と化す。その津波が、今作の3人の主人公の一人の命運を大きく変えます。そして、場面場面で降り注ぐ雨。今作は、特に雨を降らさなければならない場面はないのですが、何か物語の象徴としてのシンパシーを感じます。


僕が感じた、本作の中で描かれている主題は、『境界』。それは単に生と死の境界だけでなく、様々な要素が含まれているように思います。
本作の主人公は、生まれも国も一切の接点の無い3人。唯一の接点と言えば、彼らの隣に、はっきりととも言える『死』が傍にいること。
パリのマリーは、バカンス中に大津波被害に合います。溺れながらも荒ぶる波の中で必死に生きようとするが、押し流された残骸に当たり、意識を失う。そのまま水没し、生命を失いかける。その時に見た不思議な映像。それを本にするも、誰とも共有できない内容は、むしろ出版社から敬遠されることとなります。それほど、『臨死』や『霊』という内容は、未だに近寄り難い。臨死体験が、彼女と周囲の『境界』を薄くし、そして壊していく。
サンフランシスコのジョージは、死者の声を聞き、生きている人に届けることができる霊能者。それは、自分にしかない特別な能力。しかし彼は、その能力に鼻をかけることをせず、むしろ拒もうとした。この能力は恵まれたものではない。呪われたものなのだ、と。この能力を、誰かと共有することは出来ない。だって誰にも分からないから。周囲の自分を見る視線は、良かれ悪しかれ「自分とかけ離れている」。変人として
敬遠するか、畏怖の対象となってしまう。特別な力を持たない人間としての『境界』を欲しても、彼の能力が、その『境界』を引き離してしまう。
ロンドンのマーカスは、誰よりも愛していた双子の兄ジェイソンを亡くす。薬物中毒の母との3人暮らし。いつものように福祉局が訪れ、ちゃんと養育出来ているかの監察を強いられる毎日。子どもの精神に悪影響を及ぼしてしまうような環境であるからこそ、互いの分身とも言える双子の兄弟は、拠り所という『境界』であった。それが突然いなくなる。一度でいいから、彼に会いたい。話をしたい。でも、似非霊能者は、その稚拙な能力もさることながら、彼の本当の願いすら分からない。信じられない大人社会との触れ合いに、彼の拒絶の『境界』が、日増しに膨らんでいきます。


そんな『境界』は、映像としても表現されているように思えます。
色彩のほとんどない沈鬱した映像。そこにいる人達は、確かに生きているのに、沈鬱な色彩が、どことなく生気を感じさせません。まるで、生と死の『境界』がぼかされているかのように。
また、特にマーカスの霊視の際、その場所がほとんどの場合で暗い部屋だったから、ということもありますが、人物の顔の片面にライトが当てられ、もう片方はその表情すら見ることが出来ないほど真っ暗。それも、どことなく生と死の『境界』が感じられます。


やがて接点の無い彼らが出会い、それぞれの『死』を見ることによって、自分自身が見てきた『死』を、見つめ直そうとします。それは自分の身の上であれ、能力であれ。見つめ直した結果は、この作品には描かれていません。きっと、その後も悩み、苦しみ、落ち込む日々も多いかもしれません。でも、これまでと違う『死』の向き合い方が出来るかもしれない。新たなスタート。それも、過去の出来事や経験からの飛躍や変化という『境界』が存在すると思います。


個人主義になった今、個々人が自由に『境界』を作ったり、定めたり、取り外したりすることが出来るようになりました。その最大の武器となったツールの代表格が『インターネット』。またインターネットによって、仮想世界の『境界』までも、作ることが出来るようになりました。
でも、それが、本当に、人間が根本に欲した『境界』なのでしょうか。
今作は、それぞれの登場人物が『死』という『境界』との向き合いを描いているものの、その根本は、単に『死』だけでなく、自身が取り巻く環境の『境界』にも言及しているように思えます。リアルとインターネット、様々なところに大なり小なりの『境界』があるものの、その『境界』は、全てが人間全てに対し決して望んだ、理想的なものではありません。ある人には理想的であるものの、ある人には絶望に打ちひしがれることにもなる。僕達一人一人の『境界』、便利なものが蔓延する今の世の中だからこそ、今一度、見つめ直す必要があるのかもしれません。

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2011/02/19 20:52 | Comments(0) | TrackBack(12) | Review - Movie

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