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2024/04/26 11:28 |
[Review] コラテラル

コラテラル普段通りの、真夜中のロサンゼルス。客を乗せては降ろし、乗せては降ろしの繰り返し。退屈だと思いながらも、同時に「これでいい」と妥協している自分がいる。変わらない日常を、敢えて変える必要は無い。自分の夢を、自分の目標を、上っ面の口上のように垂れながら。まるで自分への言い訳だ。
そんな運命が突然変わることを、一体誰が信じる? もう夢を叶えるような年じゃあ無い。ましてや、夢を見るような年なんて。そもそも自分の運命なんて、こんなもんだと思っていた矢先だ。しかもそれが、殺し屋によるものだなんて。そしてその殺し屋に、『運命が変わる』ことについて講釈垂れられたなんて、誰が信じる? 誰も信じやしない。

だがそれでも、俺は変わった。上っ面なんてほとんど変わっちゃいないが、自分の手に染まる血が、否応無くそう感じさせる。ほんの数時間前の俺から見れば、全くもって予想だにしないことだ。
今までの俺は、所詮『逃げ』だ。口上だけ饒舌になって、一度たりとも行動に移したりしやしない。一日数回の南国の写真の癒しだって、所詮それは逃避行に過ぎない。だってそうだろう? 所詮癒しは5分間。その後は反吐を吐くぐらいの現実の数々だ。特に誰にも無関心のこの街じゃ、もう吐き捨てる場所なんて、どこにも無いがな。
逃げて逃げて、逃げ遂せて。最終的にどこにたどり着く。どこにもたどり着けやしない。だったら何で自分はこっちに逃げる? 楽だからだ。何も考えなくていいから。ローリスク・ローリターン。所詮は変化なしという麻薬付けの毎日さ。

俺は奴のようになりたかったのかもしれない。決して殺し屋になりたい、だなんて思っちゃいないが。
だがそれでも、奴がいなければ、俺は次の日も、その次の日も、単に客に自分の口上を垂れて、無駄な逃避行に時間を潰していたんだろうな。奴が殺した人間なんて、俺にとっては所詮新聞の一面を飾る記事に過ぎない。次の日になっていれば、頭の片隅にすら残っていないだろう。
所詮、それは奴も同じだ。奴にとって、殺しはビジネスだ。人を殺せば金が貰える。奴にとって人の命なんて、その程度の価値しかない。

言うなれば、方向性は違えど、奴も俺と同じ穴の狢。
奴はイカれた野郎という以外、自分というものに麻痺している上では俺と同じだ。
そんな奴が、俺に説教を垂れる。そこで何故俺を選んだんだろう?

俺以上に金に貪欲で、人殺しだろうが何だろうが、他人のことに口出しなんてしない奴だっている。そいつに頼めば、スムーズに行けただろうに。
よりにもよって、俺とはな。
まあ、だからこそ、俺も『自分から運命を変える』ということを、身に沁みて知ることが出来たわけだが。


所詮、世界に生きる人間は皆、One of Themだ。誰も彼も主役になんてなりえない。
思うのは勝手だ
そう。思うのは勝手だが、思うだけと、行動に移す奴とは、やっぱり違う。

奴は自分には鈍感だが、他人には敏感だった。
何も行動しない俺を、ただの哀れみの眼でしか観なかった。「所詮こいつも、One of Themか」と。
他人にかまけてる殺し屋なんて、殺し屋失格じゃないのか?
まあ、今となっちゃどうでもいいことだ。
俺は奴が嫌いだったが、それでも感謝はしているんだぜ?

こんな俺に対してでも、「口上垂れる暇があったら行動に移せ!」と背中を押してくれたのは、奴だったんだからな。

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2004/11/23 20:38 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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