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2024/04/20 12:38 |
[Review] キングダム/見えざる敵
キングダム/見えざる敵非常に後味の悪い映画。映画の出来とか、演技や演出の良し悪しとかそういう部分ではなく、今も地球のどこかで、一向に消える事のない憎悪の渦を描いている、という意味で。
これまでのアメリカは、「自分達(=アメリカ)にとって敵であるものを倒す事、即ち正義」という理念が、国土、国民のほとんどを覆い尽くしてきた。それは、今まで公開されたアメリカ産の(特にアクションやサスペンス系の)映画でも随所に見られる。だが、その理念の裏側で、『悪』と見なされた存在の憎悪がこれまで以上に燃え上がっている、というところまで見ていない。「正義は勝ち、これでこれまでの禍根は一切消える」と思っている。だが、今も尚止むことのない自爆テロの数々は、決してそうではないことを物語っている。そして、「自分達がやっていることは、本当の意味で『正義』なのか」と疑問を投げかけ始めている。『華氏911』で、音楽を聴きながら、または口元に薄ら笑いを浮かべながら、人を殺しているところを目の当たりにしている時と同じように。
社会情勢にフェアであるように製作されているが、やはりこの映画も、どこか「アメリカ視点」であるように思えてならない。

そして、彼等が『敵』として見なしている者達は、得てして「~~に住んでいる、または~~を信仰宗教としている」と思われがちだが、住んでいる場所、信仰している宗教がテロリストと同じだからといって、テロリストと同じように括りつけることはできない。どんな世界に住まう者でも、そこに住む普通の人々は、自分の国、自分の生きる地域の平和を願うものであり、それを脅かすものは決して赦そうとしない。
普通の人たちが平穏無事な世界を願っているのは、地球の裏側とて同じ事なのだ。


実のところ、この作品は2人のアカデミー賞受賞者を擁した作品でありながら、出演者の意気込みや意見といった声を聞くことは全くと言っていいほどない。「アメリカ人俳優だから、下手な事を言う事が出来ない」というのもあると思うが、それ以上に、今も尚現実に起こっていることに、その渦中で理不尽に命を摘み取られていることに、「コメントを残す」ということ自体おこがましいと思っているのではないか、と考える。
彼等は何も言えない。だからこそ、その逼迫した状況をせめて多くの人に共感してもらうように演じる。『演技』という範疇内で収まるのではなく、まさにスクリーン上に投影される全てが、「今も尚現実に起こっている」と思えるように。

戦場に縦横無尽に鳴り響く銃声や爆音。立ち込める硝煙と、血と肉の腐敗臭。そして、高く積まれる鮮血と肉塊の惨状。それらは全て、人が人であるが故の愚かさ、過ちの証であり、人が人であることを失わせる証でもある。そんな惨状が続けば、やがて自分がとっている行動すらも、『正義』なのか『悪』なのかの判断もつかなくなっていく。
これから先も、そんな世界がこの地球上のどこかで勃発するのだろうか。そしてその度に、誰かが死に、誰かが憎み、誰かが復讐を企てるのだろうか。

この作品が、『滅びの道』への歩みを食い止めるための一石にならんことを。

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2007/10/13 22:43 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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