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2024/04/26 21:21 |
[Review] もののけ姫
もののけ姫人間の都合で捨てられた少女の気持ちなど、人間に癒せるのか。

人間の都合で追われた獣の住処など、人間に用意できるのか。

人間の都合で壊された自然の摂理など、人間に戻せるのか。

一度壊れたものは、例えそれが何であれ、有形無形のものであれ、元に戻すことは出来ない。もしくは困難を極める。人間が人間の手によって作り出されたものでさえそうなのに、自然が、大地が、地球が、宇宙が作り出したものを、人間が? 人知を超えた『自然』という大いなる力を持つ存在が、何万年、何億年かけてようやく作り上げた摂理を、たかだか数万年程度の歴史しか持たない人類が?



大人になって観直す第二作は、『もののけ姫』。

村を守る目的とはいえ、タタリ神に刃を向けた少年アシタカは、タタリ神の呪いを受ける。呪いを解く方法、そしてその後の運命を見定めるために西の方へ旅立ち、そこで出会ったのは、森を開拓し鉄を以て武器や生活道具を作るタタラの民と、森の山犬に育てられた人間の少女サン。そして、さらなる豊かさを求めるために森の開拓を推し進め、さらにはその神まで手に掛けんとする人間と、自分たちに生と死の摂理の厳しさと優しさを教えた、大切な住処である獣たちの、血で血を洗う戦い。

自然と人工。
神と人間。
有史以来、延々と繰り広げられた戦いは、絶えることなく続いている。エデンの楽園で知恵の実を口にしたその時から、人間の『神気取り』は止むことがない。
その『神気取り』のおかげで、人間はこれまでにどれだけの報いを被った? バベルの塔を建て、神の御座に近づこうとしたから、神の雷に打たれ、塔は破壊され、共通の言葉を失った。事実・伝説如何を問わず、その報いは枚挙に暇がないはず。
どんなに打ちひしがれても、挫折に見舞われても、立ち上がり、這い上がる力と知恵を持っているのに何故     

そして、人間の『神気取り』は、今もなお続いている。自然と大地の畏敬の前に、人間の手で自然と大地を守ろうとしている。しかしその実は、結局は人間の欲と利権の取引の材料とでしか見ていない。それは、彼らに人間ほどの力や知恵がないから? ならば、人間以上の力や知恵がある存在が登場すれば、人間は、彼らに自分たちが「取引される」ことを、容認するのだろうか?


この作品は、自然や動物の擬人化である。本当にこんなことが実際に起こるのはあり得ない。でも、これまで人間が壊してきた『存在』や、破壊の『歴史』を凝縮すると、こうなるのだろう。
この作品も、『風の谷のナウシカ』と同じように、人間による支配欲が大いなる代価に飲み込まれる(シシ神による森と自然の破壊(=死))を表している。しかし、大きく違うところは、この作品の人間も、生きることにどこか必死さを感じる。勧善懲悪の悪側に立つ存在ではない。ただ、その人間の生き行く道標や矛先を見誤ってしまっただけなのかもしれない。
大きく見れば自然、地球、宇宙、小さく見れば獣、微生物、これらは人間と違い、ものを言わない。どこが苦しいのか、どこが痛いのか、それを言葉にする手立てはない。それはきっと、宇宙の摂理に組み込まれた者たちの運命なのかもしれない。幸か不幸か、『知恵』を付けたがゆえに、人間は宇宙の摂理から少し離れた存在にいる。宇宙の摂理を僅かながら俯瞰視する能力を持っている。
その代価、という意味であれば、もう、宇宙の摂理の一部に組み込まれる、元に戻ることが出来ない、というところか。
だからなのだろう、結局のところ、『神気取り』とはいえ、それらの存在の未来の選択権は、人間が握っている。
但し、それに対する報いは、ものすごく無機質で、ものすごく荒っぽく、容赦しない。それが恩恵であれ、神罰であれ。
そして壊されたものを元に戻すことは、ほぼ不可能に近いけれど、それがゆえに、新たな方向に立て直すことができる。これもやっぱり人間が持つ選択権の行方に委ねられ、その報いも同様だ。アシタカとサンの絆と同じように。

未来はまだ、決まっていない。
私たちは、これから先、どんな未来を選ぶのだろうか。そして、選んだ先に見える世界、そのために支払うべき代償は何だろうか。
全ての存在が幸せになれる未来は決してあり得ないけれど、一つでも多くの存在が幸せになれる未来の選択肢を見出していかなければ、と思う。

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2010/10/11 20:40 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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