いろいろとレビュー等を拝見すると、悪に染まったトビー・マグワイアが不評だということらしいのですが、
確かにトビー・マグワイアがアレじゃ不評だわ。
ジム・キャリーにリスペクトされたか? とか余計なことを考えつつ、「似合わねぇ~。全然本人とキャラが合ってねぇ~」と思いながら鑑賞しておりました。まぁ、「ピーター・パーカーが悪に染まったらどんな行動に出るか」というのを意識した上での演技なんでしょうけれど、如何せん、トビー・マグワイアの真面目そうな顔とアノ行動はマッチしておらず……
『スパイダーマン3』は、アクション映画というより、むしろ過去の作品に比べヒューマン・ドラマ色が強くなっている作品に感じました。アクションシーンやVFXに関しては、1作目・2作目の折り紙つきですので言わずもがな。まぁ、サンドマンとの戦いは、バトルアクションというより怪獣映画に近いものを感じましたが(笑)。
勿論、過去の2作品も主人公であるピーター・パーカーの心の葛藤を中心としたヒューマンドラマを紡いでおりますが、『スパイダーマン3』は、主人公だけでなく、登場するありとあらゆる人物の『葛藤』、『嫉妬』、『断罪』といった、人間の負の感情が交錯しています。
オムニバス形式に似た形で進行しているため、それぞれがそれぞれの感情を抱え、行動していきます。が、行動は違えど感情の方向性は一緒。だから、とても展開が早く「詰め込みすぎでは?」と思いつつも、分かりやすい展開に仕上がっているように感じましたので、違和感なく、物語の世界に入り込むことが出来ました。
本来、こういったアメコミを映画化した作品というのは、ド派手ではちゃめちゃ振りが存分に発揮されて、特に何も考えなくても十分楽しめるものが多いのですが、『スパイダーマン3』に関しては、ヒューマン・ドラマを意識したためか、他のアメコミ映画にはない、少し悲しい雰囲気を漂わせていました。
それは、彼等が失ったものがあまりにも大きかったこと。得た力があまりにも大きかったために。それこそ、主人公だけでなく主要キャラクターに対し、「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉が試される瞬間でもありました。
有史以来、人間がずっと持ち続けていた、そしてこれからも持ち続けていく『善』と『悪』の心。
その両方の心に苛まれ、苦しみ、得た力の近い道を間違え、それが誰かを大きく傷つける。残ったのは、『後悔』だけ。アメリカ発の映画だけに、この映画が公開される直前に発生した銃乱射事件を彷彿させますが、別にアメリカだけに限ったことではなく、今を生きる人間全員に関係すること。
1作目・2作目以上に、スパイダーマンを『マンハッタンを駆け巡るヒーロー』より、『人間』として描いた『スパイダーマン3』。格別なハッピーエンドというわけではありません。スッキリできる終わり方とも違います。ですが個人的には、これまでのアメコミ映画とは一線を画した作品であるからこそ、こういった終わり方も悪くはありません。むしろ好きな方です。
縦横無尽に繰り広げられるアクションシーンを思う存分楽しむのもアリですが、最近、人間関係でゴタゴタしている、苦しんでいる、というような方も、ご覧になってはいかがでしょうか。世紀のヒーロー『スパイダーマン』も、一人の人間であるならば、同じように苦しみ、同じように、誰かの助けが必要な時もあるのです。
ラストバトル直前、糸を出しながら颯爽と空中を駆け回り、戦場に駆けつけるスパイダーマン。
ストッとビルの屋上に降り立ったとき、バックにはためいていたのは星条旗(アメリカ国旗)!!
これを観た瞬間、失笑してしまいました。
「ちょっと待て。これは何かの意図を組み込まれていないか?」って。
『アメリカ=正義』という図式が、一瞬のシーンから読み取れる瞬間でした。
良くも悪くも、本当にアメリカ映画ですね……