日光は今回で三度目。一回目は小学校の修学旅行で、二回目は大学のサークルのイベントで。どちらも(僕の苦手とする)集団旅行であり、あらかじめ組み込まれたプログラムでの旅行でしたので、自分だけの自由気ままな旅というのは、今回が初めてです。
そして電車で日光も初。これまでの交通手段は両方ともバスであるため、東京から僅か2時間で日光に到着できるというのは、ちょっと意外な気分になったりもしました。それでも首都圏範囲内なんだよな、日光。
日光の観光の季節というと、真っ先に思い浮かぶのは紅葉の季節。
いろは坂や中禅寺湖が、真っ赤に染まる景色は、もうこの世のものとは思えないほどの絶景。誰しもが息を呑むに違いありません。まぁ別の意味で息を呑んでしまうかもしれませんけれど。野生の猿の強襲とか(全ては無為に餌をやり過ぎた人間の業なんですが…)。
しかし、新緑の日光も劣らず格別です。何と言っても空気がおいしいし、戦場ヶ原をはじめとする湿原には、この時期特有の高山植物がいっぱい。しかも、同じ『戦場ヶ原』を歩いているはずなのに、少し足を進めると、眼前に広がる光景が違って見えるのです。柔らかな木漏れ日が差し掛かる林を歩いたら、開けた湿原に遥かに見える男体山、植物も徐々に移り変わり、深く暗い森の中へ。まるで天然の植物園。
そして、やはりこの時期は紅葉の時期に比べて人が少ないのが幸いしてか、戦場ヶ原のハイキングは、ほとんど独り占め状態。竜頭ノ滝から湯滝までの、約2時間30分を歩きましたが、すれ違ったハイキング客は、ほんの20~30人程度。聞こえるのは自分の足音くらい。自分以外の人工物は無きに等しい状態。別世界に来たような気分を味わうことが出来ます。
しかしやはり高山地帯では、急激な天気の移り変わりは常に付きもの。到着したときは雲が僅かしかない晴天でしたが、徐々に霧がかかり、空は雲に覆われ、大粒の雨が降り始めました。森を歩いていると、途中途中で幹からパッキリ折れた大木を見かけます。それも何本という単位ではなく何十本と。恐らく、落雷が激しい地区だと思います。
とはいうものの、梅雨の時期の旅行ですし(落雷はともかく)雨は既に予想済み。それに、雨に濡れた、暗く静かな日光の幻想的な景色というのも、日光の観光ガイドブックとかには無い一つの側面を見ているような気がするのです。
が。
高山地方の霧、少々甘く考えていたところがありました。だって霧に隠れて華厳の滝が見えないのです! ただでさえ水飛沫が激しい華厳の滝なのに、3mより先は全く見えない濃霧が手伝って、もはや「どこに華厳の滝が?」という状態に。大瀑布ならではの音は聞こえるんですが……
日光自然博物館でしばしの雨宿り。雨と霧が晴れてきた頃、華厳の滝へ再チャレンジ。しかしやはり上からの景色は未だ濃い霧で全く見えず。一方、エレベーターを降りて正面からの眺めは、どうやらモニターで確認できるらしい! 小学生の修学旅行にも華厳の滝は行きましたが、モニターなんてなかったのに! 時代の移り変わりをしみじみとかみ締めつつ、いざ滝の正面へ。まだ霧が濃く残ってはいましたが、それでも、雄大な滝の姿を真正面から見ることが出来ました。
華厳の滝にしても中禅寺湖にしても、霧のかかった姿は幻想的な雰囲気を醸し出していましたが、霧が濃すぎると何が何だか全く分からなくなって、魅力激減……。
それでも終日霧がかかっているわけではありませんし、しばらくしたら晴れてきましたので、幻想的な景色を愛でるならば、絶好のタイミングが必要そうです。
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華やかで、『豪華』というよりは『賑わう』という表現が合っている躑躅。森鴎外や夏目漱石の小説にも登場する『根津権現』こと根津神社のつつじ苑に行って参りました。
躑躅といえば、東京でもに植樹されている代表格の植物。花の咲いていない季節は、青々と茂った葉だけの低木が並ぶくらいで、少し素っ気無い感じも。そんな躑躅も、花を咲かせる季節になると、大紫や純白の大輪の花を咲かせ、街頭を賑わせます。
割と庶民的なイメージの花と思っていたのですが、これほどまでに多くの色彩、多くの品種が存在するとは思いませんでした。大紫や白の大輪でも賑わいを見せるのに、これほど多くの品種があると、まるで合唱でもしているかのよう。
園内には、約50種300本の躑躅が植えられているんだとか。間近で大輪の花を観賞するのも良し、遠くから、園内の色とりどりの優美な風景を楽しむのも良し。様々な楽しみ方が出来ると思います。
ただ、ご注意いただきたいことが。
園内の通路は、アップダウンがある上に、結構狭いです。休日だからかもしれませんが、朝の時間帯にも関わらず、つつじ苑は既に人で賑わっていました。なので、人と人とがすれ違うだけでも、結構一苦労なのです。
まぁ、花の名所はここに限らず、どこでも人の賑わう時は身動きできなくなるほどですけれどね…
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■初日、新幹線に乗り遅れた(丸の内線の電車遅延のため)。
→何とか、予定の便の直後の便に乗ることができましたが……。
■最初の予定地・岡山城に到着もしていないのに、デジカメを勢いよく落とした。
→撮影そのものに支障は来さないものの、ズーム機能の反応が鈍くなってしまい。
■1泊目のホテルがあまりよくなかった。
→言いたいことは山程ありますが、低価格に抑えたので敢えて言及せず。
■最終日、渋滞に巻き込まれた。
→バスで最寄り駅へ向かう予定を、早々にタクシーに切り替え。
とはうものの、ギリギリのところで最悪の事態は回避できたので、それはそれで良かったのかもしれませんけれど。何よりも珍しく落し物・忘れ物が無かった、というところでしょうか。
最終日は、錦帯橋と岩国城散策。そして、今回の旅行で最も行きたかった場所であります。
早朝にもかかわらず、既に観光客で賑わっている錦帯橋。出店も昨夜同様に軒を連ね、特に祭事が行われているわけでもないのですが、辺り一面お祭り気分。そしてここでも海外からいらっしゃったと思われる方々が多く。というより、岩国基地が近くにあるので、常駐している軍人さんとその御家族だと思われます。
やはり日本三大名橋の一つである観光地なわけですから、錦帯橋周辺はもう人人人。でも、橋を渡って吉香公園や紅葉谷公園へ足を運ぶと、長閑な公園風景が広がります。勿論、この公園も昼になれば多くの人で賑わいますけれど。
公園の中心部では野外ステージがあり、そこでアマチュアバンドが演奏していましたが、願わくばこういう日は演奏してほしくなかった、というのが僕の中にはあります。だって折角穏やかなひと時を過ごせているのですから、風もなく、太陽も暖かく、朝方、人もそんなに多くないのですから。
ロープウェイに乗って、いざ岩国城へ。
そこでも音楽会が披露されているのですが、アマチュアバンドではなく、雅楽の演奏。やっぱり和風に桜を愛でるのなら、こっちの方がいいかもネ。まぁそれでも、願わくば自然の音だけの中で桜を愛でていたかった、というのはありますけれど。ただの我侭ですかねぇ……
岩国城天守閣からの眼下の眺めは最高でした。若干靄がかかっているようにも見えましたが。
けれど、それでもよーく見えたのが、どこまで続いているのか分からない車の渋滞。錦帯橋周辺の幹線道路は、2車線の1本と、あとは西岩国駅方面からの道路だけ(こちらも2車線)。そして十分な広さの駐車場もあるわけでもなく、それでも次々と観光バスやらマイカーやらが多く詰め掛け、帰りの新幹線の予定の便まで2時間あるにはあるけど、ちゃんと到着できるのか心配という状況に。
新幹線の到着駅『新岩国駅』は、スムーズに進めば錦帯橋から10分くらいで到着できる場所。普通に考えれば2時間あれば余裕で到着できるでしょう、と思いますが、どこまで続くか、いつになれば動くのかが分からない渋滞の列を目の当たりにすれば、余裕どころかシャレにならない状態に思ってしまうのは言うまでも無く。
なので、本来路線バスで変える予定を、急遽タクシーに切り替えて帰路に就きました。少し渋滞に巻き込まれましたが、それでも思った以上に巻き込まれること無く、すんなりと駅に到着することが出来ました。
今回は、予定より多く場所を回ることが出来て、充実した旅行でした。
いつも以上に予想外の出来事が続出しましたが、まぁそれも旅の醍醐味ということで。大きな支障を来すようなことはなかったので、最終的にはOKということで。
また、予てから行きたかったところにも行くことが出来ましたし。桜見物(特に錦帯橋)が目的でしたけれど、それに加えて勉強することも多かったと思います。
まだまだ行きたいところ、行き足りないところがあり、今こうやって文章を書いている最中でも、「次どこへ行こうか」と考えていたり。まぁ、常にお金と時間との戦いと相談の連続なんですが。
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たとえそこに正当な理由があっとしても、戦争によって誰かを、何かを傷つけたことは、消すことも無かったことにすることもできません。
史上初めて、原子爆弾が落とされた。一瞬にして多くの生命が塵や灰と化した。そしてその後遺症は、今でも多くの人の身体を蝕んでいる。
残酷な事実の中で、戦争によって被害にあった数々の展示物は、過去の戦争の愚かさや苦しさが漂っています。しかし忘れてはならないのが、誰かを、何かを傷つけてもいる、ということ。その為の兵器を次々に造りだしたのもまた事実。
誰かを、何かを傷つけなければ、大切なものは守れない。そうなのかもしれない。現に、それで圧制から開放された国々もある。歴史がそれを物語っています。しかしそれでも、傷つけることによって誰もが幸せになることなんてあり得ない。誰かが悲しみ、誰かが苦しむ。
2日目に訪れた、『大和ミュージアム』と『広島平和記念資料館』。展示内容は全く違いますが、両者とも共通していることが、『科学技術の功罪』と『科学技術を担う人間の未来の選択』。残虐極まりない兵器によって多くの生命を奪われたが、私たちも残虐極まりない兵器を数多く作っていた。それだけでも当時は高い科学技術力であったが、今は当時をはるかに上回る科学技術が開発されている。勿論、それを戦争に使用すれば、これまでとは比べものにならない殺傷力を誇る兵器を作り出せるかもしれません。
有史以来連綿と築き上げてきた科学技術は、誰かを幸せにするものではなかったのか。誰かを不幸にする為に発展してきたわけではない。2つの資料館は、これからも静かに、見る人一人一人に問いかけているのでしょう。
それにしても、ビックリしたのがいつにも増して海外からいらっしゃった方々が多いこと多いこと。桜の季節だから、というのも手伝っていると思うのですが。特に広島平和記念資料館は、今回で3回目なんですが、それでも、いつにも増して多くの海外からの観光客で賑わっていました。そう言えば、昨年夏、知覧特攻記念会館へ訪れた時も、同様に海外の方が多く詰め掛けていたと思います。
イラクやアフガニスタン、アフリカ諸国の内紛等、不毛な戦争が長引いていることもあり、世界情勢はいつにも増して不安定。9.11の同時多発テロ直後は、一時期、アメリカが、世界が、報復攻撃に息巻いていた時もありました。しかし、結局のところ、それによって生まれるものは何も無く、ただただ無残に、動かない、物言わない身体が死屍累々と積み上がっていくだけ……。
先の見えない、終わりの見えない、脱却しようにもできないからこそ、もう一度、戦争の愚かさ、酷さを知る為に、日本国内に限らず、様々な方がいらっしゃるのかもしれません。
広島市のシンボルといえば、広島城。しかし、間近で見ると微妙にボロい…(←失礼)。でも、中の展示物は盛り沢山です。広島城も、原爆投下の際に全てが吹き飛んでしまったそうで。。。この年、再建して丁度50周年に当たるんだそうです。
広島電鉄白島線をまたいで、縮景園へ。これぞ正しく、日本庭園の王道を行っている、と言わんばかりの荘厳な造りの庭園です。その名の通り、様々な日本庭園の景色や要素を一つに集め、それが全て堪能できるように縮めたような感じです。
広島市内の名所を堪能したあとは、今回の旅行のメインである錦帯橋へ。
錦帯橋は今回で2回目。前回の旅行で絵葉書を購入し、桜と錦帯橋と屋形船の光がとても綺麗だったので、絶対にまた雇用というきっかけになった名所です。
これまでに訪れた、岡山城や後楽園、広島城や平和記念公園もそうでしたが、錦帯橋周辺も、満を持しての桜の満開。沢山の観光客が音連れ、夜店も軒を貫き、はるか遠くまで渋滞の列!
そして、最も目を奪われたのが、頂にある岩国城のライトアップ。山々が全て闇に包まれているのに、月明かりのように岩国城が光っていて、まるで幻想的な光景でした。
長年の夢が叶った一瞬でもあります。写真の撮影技術は相変わらずですけれど……。。。
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実は何年も前から計画していた、山陽地方の桜見物計画。それがようやく実現する運びとなりました。京都や奈良のように、一箇所に名所が盛り沢山、とまではいかないものの、日本を代表し、また桜のような自然の景色と驚く程に合う場所が多い山陽地方。2泊3日の行程で行ってまいりました。
初日は岡山で、『烏城』として知られる岡山城と、日本三大庭園の一つに数えられる後楽園を散策。
天守閣の全面に塗られた黒と、桜の薄く淡い桃色のコントラストは、太陽の光を浴びると、絶妙なまでの美しい色彩に。光の眩しい季節ですから、そんな中、黒に染まった城というのは、重厚感はもとより、はっきりと、というよりくっきりとした存在感を醸し出しています。
だからなのかもしれませんが、黄金に輝く鯱も、遠目からでもよく分かります。
岡山城を訪れたのは、今回で2回目。しかし今回の旅行で初めて知りました。不等辺五角形の形をしているということに!
天守閣内の展示を見ると、日本の城郭でも特に珍しい『不等辺五角形』の形をしているという、岡山城の天守閣。最初、これを見て「??」と思ったのですが、後楽園へ行く途中の月見橋から天守閣を振り返ると、城の下層の中央部が、少し出っ張っているのです。かなり今更感満載のネタですが、今までの城郭には無い意外な一面を見たようで、全面真っ黒と同じくらいのインパクトでした(←本当です)。
日本三大庭園の一つとして知られる後楽園は、庭園というよりかは、公園という感じ。庭園の中央は、造園された池と植樹がありますが、どれを取り囲むような、広大な芝生。更にその周囲、というより、庭園の外郭をなしているのが、鬱蒼と生い茂る林。その中に静かに佇む茶室や座敷。
偕楽園や兼六園ともまた違う、けれど見所満載で普通の人にも親しみやすい空間。東京にも様々な庭園がありますが、似ているところといえば新宿御苑でしょうか。日本庭園のように、目で、歩いて景色を眺めるところは勿論、家族や友達とで遊ぶところもある多目的公園。岡山駅周辺もそうでしたけれど、自然と人が集まるような巧みな空間の造りが、そこかしこに見受けられる街だと思います。
岡山県立博物館にて、郷土資料を拝観した後は、新幹線、在来線と乗り継いで広島県呉市へ。ホテルで1泊し、2日目は広島市内を回ります。
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