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2025/02/11 22:57 |
[島根] 神々の坐す国 中編
有り得ない     

何が有り得ないって、限られた時間の中で全て見尽くすことが。例え地球が終焉を迎えようとしても、見納めることは叶わないだろう。悠久の時を刻み込むだけの魅力が、足立美術館の庭園にある。窓枠という額縁の向こうに見える風景は、一度たりとも同じ様相を留めていない。春夏秋冬の四季折々の様相、陽光と月光に照らされた昼夜の様相、果ては大地の木々の揺らぎ、池の水面、大空の雲の流れの瞬間に至るまで。
また、たとえ同じ窓枠からでも、覗く角度によって違う風景を見ることができる。木々だって生長する。
と、ここまでつらつらと書いてみたものの、長年にわたる多くの庭師の努力と業の数々と、更に長きに渡る自然が創り出した風景を前に、素人の語りなど愚考に等しい。


足立美術館 - 其の一 足立美術館 - 其の二 足立美術館 - 其の三



何枚か写真を撮ってきたが、全てがベストショットに成り得る風景でありながら、決して本当の「ベスト」な時間など無いのだろう。どんな名うての写真家も、真のこの日本庭園の美しさを捉えることは、至難の業に違いない。


その後は横山大観特別展示室・北大路魯山人等の展示室へ。

『横山大観』は、山海二十題とあるように、雄大さと神秘性を兼ね備える霊峰富士と、時に荒々しく時に穏やかな海の日本画が多い。そのような絵の中で、僕が注目したものは、特に海の絵に多い『月』だ。満月、半月、三日月等様々であるが、海と共に描くことで、その月に込められた真情がよく分かる。
海は、横山大観がその時描いた身辺や社会状況を、月は、それを眺める横山大観本人のように感じられた。
友や恩師の死、太平洋戦争の世情を前に、横山大観はどのような思いを馳せていたのだろうか。月の満ち欠けが、彼の目と心を表現しているように思えた。

『北大路魯山人』の作品は、一見平凡である。形も、デザインも。でも、どれを見ても「苦しさ」を感じない。新しいものをあれもこれもつくろうという「楽しさ」があるのだ。「新しい」ものをつくり続けるというのは、通常、いつかその斬新さが失われたり、創造性が枯渇するかもしれない、という恐怖におびえるかもしれないのに、彼の作品にはそれが感じられない。
魯山人の言葉に、下記のものがある。

  個性だとか、創作だとか、口でいうのはたやすいことだが、現実に表現が物をいうような
  ことは、なまやさしい作業でなし得られるものではない。
  さあ自由なものを作って見ろと解放されたとしても、決して自由はできないものである。
  第一過去の人間が作った美術に十分心眼が開かなくては、かなわぬことである。過去と
  いっても千年も二千年も前からの美術、芸術に目が利かなくては、かなわぬことである。
  食器師だからというので、陶器ばかり観ているくらいの注視力では、乙な器は生まれる
  ものではない。三百年の茶碗が作りたけ
  れば、千年前の美術が分からなくてはかなわぬものである。


ただ単なる陶芸家ではなく、陶芸に纏わるあらゆるものを彼は会得している。そしてそれを人生の一部として楽しんでいる。不器用にも見える彼の人生の道筋だが、不幸はどこにも滲み出ていない。作風にも出ているように、それが彼の生き様なのだ。


足立美術館を後にし、電車で出雲へ。
出雲大社付近では、あと数時間後には新年の参拝客で賑わうというのに、閑散としている。嵐の前の静けさなのだろうか。
年越しに出雲そばを食べ、温泉に浸かって一休み。大晦日のTV番組は、マンネリ化した歌番組か格闘と、どこも似たり寄ったり。日本レコード大賞を受賞した倖田來未を見て、あとはNHK教育でゆったりオーケストラ鑑賞(爆)。
ケータイ審査員? すっかり忘れてました。


年越しと共に出雲大社で参拝。本殿にて参拝後、宝物殿へ。出雲国の古来より伝わる宝物の数々が陳列されているが、中でも最も目を引いたのは、宝刀『村正』と『正宗』。実物を見たのは初めてだ。光が当たると、『村正』は氷のように青白く光り、『正宗』は炎のような燃える光を発する。その美しい刀身は、まさに日本の古来の美術の真骨頂とも言えるだろう。


大晦日の出雲大社 - 其の一 大晦日の出雲大社 - 其の二


最後は拝殿にて祈祷していただいた。拝殿の中は、お香を焚いているからか、畳の香りに混じって独特の香りを醸し出している。が、後ろは普通に参拝客がいるため、賽銭を投げる小銭の音でうるさい。厳かな空気が半減。拝殿で祈祷していただくのは、元旦の日はあまりお勧めしない。
この祈祷であるが、料金が三千円/五千円/一万円とそれなりにリーズナブルな値段も設定されていた。なので、一つだと味気ないので三つほど願い事を選んだ。
が。ここでブービートラップ発生。この料金、願い事「一つにつき」、の値段なのだ。つまり合計九千円。想定外の支出に、今年の幸先が思いやられた…… orz
(おみくじは良かったのに……)



『島根県』の写真集についてはこちら

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2005/12/31 23:57 | Comments(0) | TrackBack() | Outdoors
[島根] 神々の坐す国 前編
予てから、横山大観の絵や北大路魯山人の陶器が展示されている足立美術館に行きたいという強い年賀あり、島根へ旅することにした。

連日の日本海側の大雪で、飛行機のフライト自体が危ぶまれていたが、幸い、規制ラッシュの混雑程度の遅れのみで、無事出発。切り立つ山々を白銀に染める神秘的な雪景色を、飛行機の窓から眺めながら、さぞかし今の島根も幻想的な銀世界になっているだろうと思ったら。雪はまったくといっていい程無く、しかも天気は晴れ。
まぁそれほど寒くはないし交通機関のマヒも無いだろうから良かったものの、ちょっと拍子抜け……


気を取り直して、ホテルに荷物を預けてから、市内散策。
田園が広がるのどかな市街地を想像していたが、思った以上に都市区画整備がなされていた。冬の清涼な空気も手伝ってか、車も多く行き交うのにゴミゴミとして感じがなく、むしろ都市が一つの公園であるかのような、そんな感じを受けた。また、宍道湖から県庁~松江城にいたるまで、島根の県木である黒松の木が多く、雪国らしく雪の重さで皆ユニークな曲がり方をしていた。

松江城を経由して、小泉八雲の記念館・旧家と武家屋敷へ。


松江城 - 其の一 松江城 - 其の二


天守閣は、太平洋戦争後に解体修理が成されたものの、関が原の戦いや明治維新を経ても、かつての雄姿をそのまま留めている。望楼式は360度の大パノラマ。この日は雲が多かったため遠くまで見渡すことができなかったが、空気の透き通る晴れた日には、東には雪化粧の大山、南には夕日に照らされた輝く宍道湖が見られるだろう。

また、天守閣を含め松江城の敷地内には、大小多くの桜の木が植えられていた。きっと、桜が満開のころには多くの観光客で賑わうのだろう。桜と城のコラボレーションは、どこの城でも合う。山陰旅行の季節を間違えたか……

小泉八雲記念館へ行く前に、茶屋で一服。松江名物といわれる『ぼてぼて茶』を堪能する。泡だった番茶に、十穀米・黒豆・津田カブ・カブ菜・椎茸・野焼・高野豆腐を混ぜて飲み干すのだが。これがまた筆舌し難いビミョーな味。ある意味、好き嫌いがはっきり分かれる飲み物だと思う。


小泉八雲記念館は、彼自身の作品や彼の子供たちが描いた絵等の作品が展示されていた。


小泉八雲記念館 - 其の一 小泉八雲記念館 - 其の二


ほかにも、生前使われていた生活用品が展示されていた。何故かBGMはエンヤ(恐らく、彼の父親がアイルランド人だからなのであろう……)。
打って変わって、旧家では彼が愛した日本庭園や伝統的精神がそのままで残っていた。ある意味、日本人よりも日本人らしい面影がそこにあったのではないかと思う。

単に、日本の風情が好き、というのではないのだろう。石の一つから木々の一本まで、ヨーロッパ出身でありながら日本の怪談を書き上げたのは、彼の持つかつての日本人の精神の一つである『八百万の神』とか『九十九神』といってところにあるのではと思う。生きているものも生きていないものも、須らく神が宿るという概念。それは宗教を取り払った、感性豊かな日本人独特の心。それが彼の琴線を引いたものであり、また、今の日本人に問いかけるメッセージなのかもしれない。


堀をグルッと巡り、島根県庁に差し掛かったところで、天守閣から鳥の鳴き声が。


ピューピリリリリリリ……
             ピューピリリリリリリ……

鳶



鳶だ。数羽の鳶が群れを成しながら、上空を旋回していた。泣き声もよく通り、夕焼けで赤く染まり始めた空を悠々と飛ぶ鳶の姿に、しばし時を忘れてジッと見入っていた。


ホテルに戻った後は、超高価な島根和牛のサーロインで舌鼓を打ち、松江しんじ湖温泉で指先が十分にふやけるまで満喫した。初日は特にメインではないのに、思った以上に楽しめて本当に満足。



『島根県』の写真集についてはこちら

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2005/12/30 22:44 | Comments(0) | TrackBack() | Outdoors
[Event] 秋祭 '05
秋祭へ行ってきました。



今年のコンセプトは『虹』だそうです。
「七色の橋」から、様々な企画や人のつながりを提供する、という意味が込められているんだそうです。


確か、僕達の代も『虹』というコンセプトが最終選考まで出ていたのを記憶しています(確か金澤パパりん発案)。
最終的に『0』に落ち着きましたが、時を越えてこんなところで実現するというのも、感慨一入だったりします。


まだ初日の過程が終わったばかりだけど、泣いても笑っても、『君達の秋祭』は人生でこの2日間のみ。
精一杯動いて、思いっきり楽しんでください。



ちなみに。
今年のλ19前の汚れ具合はこちら↓



λ19前の様子



外から見ると相当散乱しているように見えましたが、何気に備品類がまとまっていました。
『フリマ並みの陳列の仕方をしている』という表現が正しいのでしょうか…

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2005/10/15 22:17 | Comments(0) | TrackBack() | Outdoors
[Event] イサム・ノグチ展
イサム・ノグチ展イサム・ノグチ展に行ってきました。


名前はもとから知っていたのですが、美術書のみで実物を見たことがありませんでした。東京都現代美術館という、交通の便から見ると微妙に不便なところで開催していたので、行く機会を決めあぐねていたのですが、常設展でもないし放っておいたら開催期間を逃してしまうので、このたび足を運ぶことに。

展示のカテゴリーを(私見ですが)大雑把に分けると、『抽象的構造物』と『彫刻』。

『抽象的構造物』は、真鍮やブロンズの板(=2次元物)を組み合わせて、表現体(=3次元物)を構築するもの。
芸術の主な表現方法は、芸術の持つ美しさや表現を『そのまま』出すタイプや、美しさや表現の更に奥に『作者が真に表現したいもの』があり、それを痛烈に出しているものがあると思います。
しかし、これは『抽象的』なのですから、それをそのまま見ても何が何だかサッパリ分かりません。だからこそ、見る人に『想像させる』力を持っているんだと思います。

展示物には大抵解説がついているものですが、まず、その解説やガイドブックを一切見ず、その展示物が何を表現しているのかを想像する。その後、解説やガイドブックを見てもう一回展示物を見る。解説やガイドブックに書かれた内容を元に、再度展示物を見て想像する。
こうすることによって、よりその製品に対する想像力が増し、本質を見ることができるんじゃないかと思います。何より、場合によっては同じ作品を違う視点で見る楽しみを得る事が出来ますし。

『彫刻』は、美術についてズブの素人の僕でもスゴイと思いました。『そこにある彫刻』というのではなく、『実際に地面から生えてきたような彫刻』と感じられるところがスゴイ。
まさに、『地球を彫刻した男』という異名を本当に感じさせる作品だと思いました。
自然と一体化した彫刻であるからこそ、人々が集まり、自然と調和する公園のオブジェとして色々なところで使われているんだな、と思います。

普通の遊具とは違い、動かないスタティックなオブジェですから、きっと遊ぶ子供達にもいずれは飽きられるのでは? とも思ったのですが、
作品自体が、色々な角度から違う表情を映し出し、また、時間、いわゆる太陽光線の反射具合によって様々な様相を見せるから、むしろ飽きないんですね。


見る人にいろいろな『想像』をさせたり、いろいろな『様相』を見せる、そんな多面的な作品が展示されている展覧会。
今日僕が見たものも、明日には違うように見えるかもしれないし、もちろん、人それぞれ全然違うように見えるのでしょう。
是非、行ってみてください。

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2005/10/01 20:32 | Comments(0) | TrackBack() | Outdoors
[Event] 恐竜博2005
美術展や科学展に行くと、必ずといっていいほど解説書の冊子を買います。
その展示会に行った証拠になる、というのも勿論ですが、
展示会では紹介することのできなかった、製作秘話とか、細かい解説とかが書いているので、展示会後の読み物としても活用しています。

大抵の展示会では、作品に触れるなんてことはできないし、撮影することもできません。
でも、来たからには何らかの記録が欲しいので、このような解説書は個人的に非常に役に立ってます。



恐竜博2005国立科学博物館の特別展示会『恐竜博2005』に行ってきました。
ほぼ完全に近い形で発掘されたティラノサウルス『スー』の化石の展示は、圧巻でした。
今回の発見は、ティラノサウルスの全貌の解明に大きく貢献したのだとか。

実を言うと、特別展示会の後に言った、国立科学博物館の新館の常設展示の方がよかったです。
特に3階の陸上哺乳類・鳥類の展示スペース。
なんと、色々な種類の哺乳類・鳥類が、実物大で剥製で展示されてました。

今まで、映像や写真で動物の展示を見ていたので、その動物の動きや生活史は何となく分かるものの、その動物『そのもの』はピンときませんでしたが。
今回は、他の哺乳類と大きさや毛並みといった、細かいところまで比較できるように、実物大で展示されている様子は、もはや言葉で表現できず、何度見ても興味に尽きることがありません。

今回は、1階と3階のみ見ましたが、地下のフロアもあるそうです。
機会を見て、全部見ようと思います。

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2005/05/22 07:13 | Comments(0) | TrackBack() | Outdoors

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