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2025/02/03 13:01 |
[Review] チェ 39歳 別れの手紙
チェ 39歳 別れの手紙キューバ革命と同じことが、他でも起こるとは限らない。


『チェ 28歳の革命』が、彼の革命史の成功を綴った物語だとしたら、『チェ 39歳 別れの手紙』は、彼の革命史の衰退を綴った物語。
チェ・ゲバラという人物の革命は、舞台がキューバであろうともボリビアであろうとも、それは何も変わらない。ある視点で見れば、それは素晴らしいことでもある。でも、別の視点で見れば、それは大いなる間違いであることになる。
彼の『革命』の本質、彼の中の『革命』の軸のようなもの、それは、国民の一人一人が、もしくは革命に参加している者一人一人が、革命がどんな意味と意義を持っているのかをきちんと理解すること。彼にとっての『革命』は、単なる破壊行為でも暴力行為でもない。ましてや、昨今、世界中で蔓延している自爆テロのような、自分たちの行いを強制的に正当化するような、究極の自慰行為とも思われるようなものでもない。


では、何故彼はボリビアで失敗したか。それは、『革命』のプロセスも、それまでの彼の本質、『革命』の軸に沿った形で行っていたから。
20世紀という、これまでと比較して人間文化や思考の進化の速度が極端に違う世界情勢の中での革命は、ほんの数年前に行われた手法が、今でも同じ効力を持つとは限らない。チェ・ゲバラの中に持つ『革命』の意味と意義は、恐ろしいまでに堅い基盤として根付いている。しかし、その堅さが故に、その時代、その場所に少しずつでも変えようとしないところが、逆に周囲とのギャップを生み出してしまう結果となる。
加えて、人間は本来あまりにも欲の強い生き物だ。何かを手に入れたら、次はもっといいものを手に入れたくなる。もっといいものを、もっといいものを。欲望は果てしなく続くが、手に入るものがこれまでと変わらない価値のものであれば、自ずと人間はやる気を失っていく。

足並みが揃わなくなった部隊ほど、脆いものは無い。こうして彼は、衰退の道を歩んでいくことになる。


2部作となっているチェ・ゲバラの物語を鑑賞して、彼が、これまでの政治や勢力に蹂躙された人々の姿に嘆き、それを根本から変えるために立ち上がった姿を見て、彼の深い革命に対する考えを垣間見ることが出来た(それでも、限られた時間の中だから、ほんの一部なのだろうけれど)。
でも、彼が何故『革命のアイコン』として、今でも(特に共産主義圏で)広く慕われているのかについては、分かっているようで実は分かっていないのかもしれない。恐らくではあるが、現代の革命はあまりにもプロセス重視で、最初こそ革命の意味や意義を声高に唱えていたのに、手に取った兵器の破壊力を目の当たりにしてしまい、本来の意味や意義を見落としてしまうような革命家が多いのだろう。しかし、彼は何よりもまず革命の意味と意義を徹底させることが必要だと考えた。この革命が、貴方達にとってどれだけの価値を持つのか。それを切々と伝えるために。
唯一の弱点といえば、あまりにも彼の革命の意味と意義が確固たるものだった故に、柔軟性に欠けていたということだろうか。

しかし、思想は違うけれど、彼の根本に持つものには、何か共感を得るものがある。それは、物質的に恵まれている今の時代だからなのだろうか。目に見えるものばかりを追いがちな今の世の中で、本質をじっくりと見出している人は、僕を含めどれだけ多くいるのだろうか。この作品を鑑賞した後の沈んだ感情の中で、ふとそれを思い巡らせてみた。

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2009/01/31 23:44 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie
[Review] 007/慰めの報酬
007/慰めの報酬『007/カジノ・ロワイヤル』に引き続き、ダニエル・クレイグ氏がジェームズ・ボンド役を務める007シリーズ第22弾。数々の女性を侍らせながらも、洗練され卓越された頭脳と行動力で、冷徹にスパイ活動を遂行する姿は、女性の憧れの的であり、男性の羨望の的と言えます。
しかし、前作といい今作といい、ジェームズ・ボンドはどちらかというと『未完成の男』を象徴しているように思えます。前作は、晴れて『00』の称号を手にすることが出来たため、任務にもとりわけな力を入れてしまうやんちゃで粋がったジェームズ・ボンド。任務中に知り合った女性を心底愛したものの、その彼女の裏切りと死別の狭間で、自分の心や怒りの遣りどころが検討つかない。スパイたる者、冷徹に任務をこなす。そう自分に言い聞かせつつも、撃つ引き金の行く先は、かえって破滅をもたらすことに。今作は、そんな心の傷や遣り場のない怒りを抱えながら、もがき苦しむジェームズ・ボンドを演じているように思います。

任務に冷徹な男の『未完』を綴った作品。最初から完璧なものなどどこにも無い、ということを教えてくれるからこそ、女性だけでなく男性からもどことなく受け入れられるのではないかと思います。


しかし今回はなかなか激しいですね。陸海空と追われるとは。カーチェイスだけ、とかでしたらいくらでもアクション映画で取り扱っていますけれど、陸海空全てに渡った敵味方の攻防戦なんていうのは、この作品くらいなものではないのでしょうか。また、前作は『カジノ』がメインツールとして前面に出ていたので、『諜報活動』というイメージが割りと薄いと感じましたが、今回はスパイらしく、そしてあまり仰々しいハイテク機器を使わない、己の五感と勘をフルに用いた諜報活動が多いと思います。

一方で、今作はヒロインとの絡みがほとんど無いのがちょいと残念。立場的にもボンド・ガールという立ち居地ではなく、最初の方とクライマックスに登場するくらいで、個人的にはもう少しヒロインとのシーンを増やしてほしかったと思います。
まぁ、今作のような「誰も信じない」という空気を前面に出しているジェームズ・ボンドからすれば難しいのでしょうけれど。


そして、毎度のことではあるのですがやはり今作でも鑑賞後に非常に強烈な後悔の念を覚えたのが、自分の英語力の無さ。そろそろ後悔するだけで留まらず、本気で勉強しようと思います。
この類の作品は、むしろその方がもっと楽しめる……はず!

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2009/01/18 12:43 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie
[Review] チェ 28歳の革命
チェ 28歳の革命『祖国か、死か』。

第2次世界大戦直後の南米。未だに欧米諸国の植民地支配と圧制の陰が色濃く残っている世界。戦いによって疲弊した人々に対してさえも容赦なく搾取の日々は続き、格差はどんどん広がっている。それに呼応するかのように革命やクーデターの声が日々高まっている。それでも、民衆が望んだ未来が訪れることなく、一つ、また一つと革命の火種が潰える日々。ゲバラ青年は、中南米を旅する中で、そんな人々の嘆きを具に垣間見ていたそうです。

「革命を起こす」。声に出すのは簡単でも、実際に実行に移すのはそう簡単なことではありません。革命は一人では出来ない。多くの人員の理解を得、力を借り、結集し突き進めていかなければならない。「一人の思想が全てを動かす」。それが如何に困難を極めるか、世界中の歴史が物語っています。
加えて、革命勢力があるということは、その反対の現在の政権の勢力もあるということ。革命勢力とは正反対の思想を持ち、勿論それを支持する団体も存在する。人間とは本来利己的な存在。一度手にした力や権益を、そうやすやすと手放すことはしない。「他の誰かのために」「他の誰かと共に」という考え方は、表面的に繕っても、本音の奥底は微塵も感じていない。

僕は共産主義の人間ではありませんが、それでも、チェ・ゲバラの、自らの信じた革命を推し進めるという強い意志の傍らで、「他の誰かのために」「他の誰かと共に」の意思が色濃く出ているところに、彼の『男気』のようなものを感じました。
常に前線に出て戦いつつも、傷ついた者は必ず収容する。捕虜として捕らえた敵に対しても、極力侮辱的な行為は行わない。仲間から何か教えを乞われてもそれを受け止めて教授するし、規律に反する行為をしたものは厳しい処分を下す(それは時に命を奪うことも…)。
最初はほんの数人にすぎない部隊も、徐々に増え、部隊に賛同する者も老若男女問わず集まってくる。革命を起こす以上、なるべく多くの人は欲しいが、やはり即戦力となるものが欲しいのは本音ですね。武器を持たない者、教育を受けていない者、また年端もいかない者はは帰れという。一見残酷に見下すようでも、一種の優しさなのかもしれません。本来だったら教育を受ける間もなく突進するような部隊が多い中でも、彼は部隊の一人一人が教育を受けるようにさせているから。
確かに部隊は数が多ければ多いほど有利なのかもしれない。でも、どんなに数が多くても、士気が伴わなくては何も意味が無い。時として無名兵士の銃弾が、一気に形勢を逆転することもある。彼はそれを知っているからこそ、部隊の訓練や教育、そして規律に余念が無かったのでしょう。
最初はフェデル・カストロに共鳴した革命の小さな火種が、徐々に大きくなり、業火となってキューバを覆う。民衆の支持も得てその炎が大きく燃え盛り、キューバ革命は達成するのです。

さて、本作は革命遂行時のチェ・ゲバラと、革命終了後の数年後にアメリカでインタビューを受けるチェ・ゲバラと交錯しながら進みます。
しかし、(主演のベニチオ・デル・トロ氏の演技の賜物であるのでしょうけれど)両者のチェ・ゲバラ像は全くと言っていいほど異なります。革命遂行時は、部下からも民衆からも慕われる、気さくだけど誇り高い一人の将校というイメージが強いのですが、革命数年後のチェ・ゲバラは、恐帝と紙一重の恐ろしさが際立つ人物に。
一体、何が彼をそこまで変えたのか。外面は変わっても、その内面は何一つ変わっていないのか。その真相は、もしかしたら次回作の『チェ 39歳 別れの手紙』で語られるのかもしれません。

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2009/01/17 23:15 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie
[Review] K-20 怪人二十面相・伝
K-20 怪人二十面相・伝この冬に公開された作品を、そんなに数多く観ているわけでもないのに、何故か勝手に「この冬の一押し作品はコレ!」と言ってしまう作品。しかも出てくる俳優さん・女優さんたちが、三谷幸喜監督の作品に引けを取らないくらいのゴージャスさ。しかも、単にゴージャスだけでなく、それぞれの立場や演じ方が面白いくらいに絶妙で、終わるまで楽しく観賞することができました。
何と言ってもこの作品でツボだったのが、かの有名な探偵『明智小五郎』を演じる仲村トオル氏でしょう。なにぶん、シリアスな役とか固い役、それも割りと悪役に近いが多かったのですが、「こ、こんな一面(というか演じ方)があるとは!」と、良い意味で驚きを隠せませんでした(当然、僕の不勉強であるが故ですが…)。また、羽柴家の令嬢役の松たか子氏。多分、単なるか弱いお姫様に過ぎない役柄だったら、絶っっっ対似合わなかったと思うんです。しかし、やはりそこは違ってました。単なる守られるだけではなく、その破天荒と言うばかりの行動が繰り広げられるのですから、「やっぱりこうでなくっちゃ!」と(勝手に)納得してしまいました。勿論、令嬢ならではの世間知らずや天然ボケっぷりのギャップも面白かったです。


最初は割りとシリアスな場面が続きましたが、中ほどになってから徐々に笑いとキャラクターのはっちゃけた行動が次第に大きくなり、最後の最後で、怪人二十面相の正体が明らかに。
結構最初のうちから、二十面相が素顔を出すようなシーンがあって、「あれ?」と思った次第です。だって、この作品のキャッチフレーズは、『怪人二十面相は誰だ!?』。こんなに早々と正体を明らかにしていいのか? と疑問に思ってしまうのも無理はありません。となると、この作品のクライマックスの醍醐味は、如何にして二十面相を捕まえるか、もしくは二十面相の盗みの野望を阻止するか、というところになるのです。
が、クライマックスに差しかかろうとする瞬間に、「明らかに、主要登場人物の誰かが二十面相である」的な展開がありました。しかし、不覚にもそのことをあまり用心深く考えていなかったのです。そして、早々とさらした顔でさえ、実はフェイクであったことには本当に脱帽しました。単純に素直に鑑賞すれば、本気で「二十面相にやられた!」と思わずにはいられないフェイク。二十面相の口上を聞けば、なるほどと思うかもしれませんが、普通は誰しもそうは思わないでしょう。固定観念を逆手に取ったフェイクです。

そして二十面相は、ターゲットにした獲物を、果たして盗むことが出来るのか。それとも、阻止されてしまうのか。それは是非劇場でご確認ください。やっぱり、アクションとかサスペンスには無い、純粋なエンターテインメントを鑑賞するものいいですね。

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2008/12/23 15:48 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie
[Review] 地球が静止する日
地球が静止する日ヤハウェ・エロヒムは地上に増えた人々やネフィリムが悪を行っているのを見て、これを洪水で滅ぼすと「神に従う無垢な人」であったノア(当時600歳)に天使アルスヤラルユル(ウリエル)を通じて告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。ノアとその家族8人は一所懸命働いた。その間、ノアは伝道して、大洪水が来ることを前もって人々に知らせたが、耳を傾ける者はいなかった。
箱舟はゴフェルの木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。ノアは箱舟を完成させると、家族とその妻子、すべての動物のつがいを箱舟に乗せた。洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。水は150日の間、地上で勢いを失わなかった。その後、箱舟はアララト山の上にとまった。

旧約聖書『創世記』



地球に舞い降りた宇宙人は、地球を征服しようとするのではなく、警告が目的で来たという、これまでとはまた違った設定。そして、地球を滅ぼすその最たる生物『人間』が、警告を真摯に受け止めようとしなければ、また人間が地球の滅亡を食い止めるに値しない生物だと断定されれば、即座に人間文明が尽く葬られる。
『ノアの方舟』に登場する、『ノア』と『神』を、飛来した宇宙人がその任を担う、『ノアの方舟』現代版。生物が多様に進化した地球の生態系。それは宇宙の宝。滅ぼすにはあまりにも惜しい。だから、それを滅ぼす最たる生物である『人間』を滅ぼす、というもの。
まぁ、地球を征服に来た宇宙人の作品にしても、どのみち地球人が滅びの道を歩んでしまうのは否めませんが。

これまでにも宇宙人に関する作品は多く公開されていますが、地球人のDNAを取り込んで、完全に地球人を『同じ』になる、というのは初めてではないのでしょうか。地球人に化けたり、地球人と交配するのは割と多かったと思うのですが。
しかし、この作品は飛来した宇宙人によって人間社会が滅ぼされるのに、登場するのは関係者と国防・警察関係者のみ。あまり、というかほとんど一般人の混乱というのが多くなかったように思え、現実的に描こうとしたのにどこか対岸の火事のような感じがしました。また、地球環境破壊についても、どんなにエコロジー関連のテクノロジーが蔓延しても、人間の心が変わらなければ、根本的に地球を維持することはできない。
そういったことを前面に出したかったのでしょうけれど、結構こじんまりとまとまった作品になってしまった感じがしましたので、少々肩透かししていまったのは否めません。

ヒーローものやド派手なアクションと同じように、『宇宙人もの』の作品も、大分出尽くした、という感じなのでしょうか。今回の『宇宙人』の目的設定が他と異なっていることからも、惜しい作品ではないかと思います。

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2008/12/21 16:11 | Comments(1) | TrackBack() | Review - Movie

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