今まで公開された宮崎駿アニメ映画の中で、唯一観ていなかった映画です。ジブリ映画に関して話題を共有する知り合いと、その話をしたら、
めちゃくちゃ怒られまして。
無理にでも時間を作って観ろ! と。やはりそれだけ面白い映画であるという証拠なんでしょう。
冒険活劇や少年少女の成長など、子供心をくすぐり、時に子供心に訴えかける宮崎駿アニメ映画の中で、正に全く違う路線を描いている映画です。大人の男のダンディズム、というか。
ただ、ブタ面にハードボイルドというギャップが、めちゃくちゃはまっているというか、はまりすぎてかえって滑稽に見えて笑ってしまいました。むしろ意図的にそういうキャラクター作りをしたんじゃないかと言うくらい。
そして、その滑稽さが更に輪をかけて映えるような、馬鹿な男どもとしっかり者の女たち。『グラン・ブルー』のジャックとエンゾのような、子供心丸出しの男たちの冒険や決闘の影で、「やれやれ…」とその場を見守る女の姿。
世界は、世界恐慌や荒れる戦争の時代を描きながらも、どこか、「あー、何だか平和でいいねー」という縁側で茶をすするような気持ちになります。それもそのはず。最初の方でポルコ・ロッソが空賊を撃退するシーンのBGMは、戦闘シーンとして高揚させるものではなくむしろトーンダウン系。『レジェンド・オブ・ゾロ』のように、間近で決闘を見て高揚するようなものではなく、むしろテレビのバラエティ系格闘番組を茶の間で観るみたいな距離感があります。
どっぷりとは浸からないけれど、でもやっぱり面白いから観てしまうって感じの。ある意味バランスの取れた距離でエンターテインメントを魅せる映画だと思います。
それにしても。
この映画、本当に名台詞のオンパレードですな。キャラクター同様、正に流行語大賞でも狙ったのではないかというくらい。
「豚に法律も国もねぇよ」
「さらばアドリア海の自由と放埒の日々よ」
「飛べねぇ豚はただの豚だ」
『男は背中で語れ』と言いますが、文字通りここまで『言葉』で語れるというのも、ダンディズムの成せる業でしょう。人間ではなくブタの面だからこそ、はまっているのかもしれませんが(笑)