実際、僕は初見で後者の感想を持っていたものの、シーンの一つ一つを振り返ってみて、「成程、そういうことだったのか。人の想像力の奥深さは凄い」と感じるようになりました。勿論、人によって回顧してもラストに納得できない人もいらっしゃるかもしれませんが。
想像世界と現実世界。リアルなものとリアルでないものが混在する世界。
そんな世界に生きる精神疾患患者と、その患者を担当する精神科医。
患者が予告した自殺を食い止めるために奔走するも、やがて医者の身辺に異変が起こる。まるで、その患者を担当したことでその患者に「取り憑かれた」ように。
精神科医も、精神疾患患者と同じような、『リアルなものとリアルでないものが混在する世界』に迷い込んだかのように、まるで、2人の精神が混在し、錯綜する。
今観ているのは、現実? それとも虚構?
現実を見ているのはどの立場? 医者? 患者?
本当は医者が患者で、患者はそもそも存在しないのでは?
まるで、観る人も精神疾患患者に思えてしまうような、ダークでサイコフルな映像の数々。
(勿論、本当の精神疾患患者は、この映画とは比べ物にならないほどもっと恐ろしい体験をしている人も多いはず)
この物語は起伏がほとんど無いため、観る人にとっては退屈だと思えることもあるでしょう。
また、映画の物語として、登場人物は『登場人物』として成り立っているはずなのに、まるで「成り立っていない」「固定されていない」という感覚に襲われるのも、この映画の特徴です。登場人物の言動を追いつ追われつ、やがて自分も底なしの螺旋階段に吸い込まれていくような、そんな感覚を覚えます。
でも、そんな暗く静かなところが逆に良かったです。変に明るく、アクションバリバリの路線に持っていかれたりすると、むしろ疲れるから。脳の中の迷路を手繰るように集中して鑑賞し、目まぐるしくも事の成り行きをじっと見つめるのが、この映画ではないのでしょうか。
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