選りすぐりの俳優達が多数出演するにも関わらず、あまりプロモーションとかやっていないものでしたから、もしや駄作か? と思ってしまいました。『ブラック・ダリア』がフィルム・ノワール調の映画に特化し、かなりレベルの高いクライム・サスペンスを繰り広げたものの、難解且つ複雑すぎたので、『ラッキーナンバー7』自体何だかコメディテイストの題名に見えながらも、同じような感覚なのかな、と思っていました。
が、それは杞憂に終わりました。
この映画で、自身のサスペンス好きに更なる火がついたのは言うまでも無く。『インサイド・マン』とは方向性は全く違うけれど、クライム・サスペンスの予想できない緊張感と空気は同じものを感じました。誰が本物で誰が偽者か、何が真で何が偽か。
かなり大雑把に言えば、いつもどおりの、僕が好きなサスペンス手法です。
前半は、物語の伏線になるような殺人事件が複数発生し、その事件に主人公が巻き込まれていく。前半から猛スピードで登場人物や組織があれよあれよと登場し、縦横無尽に繰り広げられます。
「もしかして、クライム・サスペンスで途中退出か……?」と思っていたその矢先! 後半を過ぎ、クライマックスに差し掛かった時に急展開が。
ここから先は言いません(笑)。が、最初に色々な伏線となる事件が勃発し、最後に真相が明らかになる時にそれらの事件の糸口や関係性が一気に収束される、ただ単にそれだけの映画ではない、ということだけは申し上げます。
確かに複雑なんですよ。色んな関係の糸が張り巡らされているから。
でも、『ブラック・ダリア』のような不完全燃焼な謎解きではなく、これは本物の完全燃焼。物語そのものに対し、「うわー、やられた!」という気持ちと「お見事!」という気持ちの両方ありましたから。
だがそれはまだまだ僕のお頭の回転がよろしくないことを意味しています。サスペンス映画というのは、漫画や小説と違って、後戻りできないのが特徴です(ビデオやDVDを除く)。ましてや暗い空間なので、メモを取ることもままならず。限られた時間の中で、決して確認のための後戻りができない状況下で、如何に目の前にある映像に映し出された証拠品を見逃さず、耳に入ってくる音声を聞き漏らさずにいるか。今日も、僕はサスペンスに挑戦し続けています。
ま、別に普通に観てもいいんですがね。これだけの凄い作品だと尚更です。