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2024/11/24 06:01 |
[Review] マイ・バック・ページ
マイ・バック・ページ昨今の時代劇を観て、脚本家などによる大胆な構想や当時の時代背景の描き方に、ネット上では一部良い意見もあるものの、多くの場合で悪い意見が見受けられます。「その時代に即した演出をしていない」とか、「あまりにも現代寄りの演出」とか、「史実ではあり得ない」とか。
でも、それがたとえ数百年の隔たりがあったとしても、人間の本質って、そう簡単に変わるものではないような気がします。その際たるものが、自己のアイデンティティや他者との関係性の確立。自分は誰なのか? 貴方は誰なのか? 自分はどこから来てどこへ行くのか? 自分のやるべきことは何か? そういった思いが、封建社会を作ったり、天下統一を図ったり、尊皇攘夷を掲げたり。そして、全共闘。正しいか正しくないかは、その後の歴史がしたり顔で語るけれど、当時の人間には、それこそが正しい道だと信じて疑わなかった。自分のやるべきことは、これなんだ、と。常にそこには、人間が人間であるが故の『エネルギー』が逆巻いていたんだと思います。

但し、そのエネルギーは時として人を大きく傷つけ、欺き、決して逃れ得ぬ負のスパイラルに陥らせてしまうことも確か。それでも、その結果がどうであれ、その後の歴史が間違ったことだと判断しても、自らの信じる道のために、信念のために、『実行した』と言う事実そのものは評価されるべきだと思います。
実際、僕自身も含め、不平不満は一人前のようにいえても、それを『実行する』に至るだけの理想家がどれだけいるのか。それとも、『実行する』には及ばないくらいに成熟した社会になったと認識すべきなのか。僕は、そういったことを客観的に考えようとしつつも、それはどこかで、今作の妻夫木聡が演じるジャーナリストである沢田がそうであり、同時に彼自身が嫌っているように、ただ傍観者として、安全な場所で安穏とそれを観察しているだけ、なのかもしれません。

そんな考えを巡らせながら今作を鑑賞しましたが、物語を進めば進むほどに、左翼思想の学生として遅すぎる決起をした、松山ケンイチが演じる梅山が分からなくなり、最終的には、憎しみを込めるようになりました(勿論、そういう役柄なのでしょうけれど)。
何故なら、彼らが仕出かしたことは、彼等の持つ理想とは程遠いから。そして、彼等の理想が叶ったその先が、未知数でもなんでもなく、ただの暗闇に覆われた世界にしか思えないから。まるで、血に飢えた獣が張りぼての理想と知性を掲げて突き進んでいくかのよう。そこにはどうしても、「日本の未来を守りたい」とか「日本の社会を支えたい」という気持ちは無いのです。ただ単に、自己のアイデンティティを表に出したかっただけ。英雄になりたかっただけ。彼等にとって、『自分こそが正義』と考えていたのだと思います。
だからなのかもしれません。作中、まるで今作を象徴するかのように、下記の台詞が往々にして口にされています。

君は一体誰なんだ?

私は一体何者なの? 何がしたいの?

普通って何?

そして、そんな理想とも不毛とも捉えられる闘争の中で、現実を見据えているのか、はたまた自分には関係ないとそ知らぬ振りをして傍観しているのか。闘争によって瓦礫が積み上げられ、血気盛んな垂れ幕がそこかしこに張り巡らされていても、見向きもせずに通り過ぎる学生達。世間一般で言われるところの、『普通の学生』達。また、世論や政治的つながりの濃い上層部のご意向に屈し、『社会の模範』ということをさも当然の如く振りまいて真実を闇に葬り去ろうとする、大人の世界。
『夢』とは、『理想』とは、心を意気揚々とさせる勇ましく心地よいものでありながら、欺瞞と逃避に満ちた毒の側面を持っている。そんな狭間の中で、それでも生きなければならない、生きざるを得ない。沢木のラストシーンの嗚咽は、そんな感情がこもっていると感じました。

『泣きたい時に、しっかりと泣ける男』とは、そういうものなのかもしれません。


『覚悟』。
これから先、色々なところで試される覚悟。僕自身、今後様々な選択を迫られる時が来る。その時、『覚悟』を以ってその選択が出来るか? そして、『誠意』を以って行動に移れるか?
この作品が、反面教師という側面ではないにせよ、鑑賞後、改めて自問自答しています。

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2011/06/10 23:08 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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