オープニングで、『スーパーマン』のテーマソングが流れた瞬間、不覚にも全身の毛が総立ちしてしまいました。
かつて、クリストファー・リーヴが演じた『スーパーマン』の最新作である、『スーパーマン4/最強の敵』が上映されて19年。その間、洋の東西を問わず、数々のヒーローが輩出されました。しかし、それらのヒーローの原型は、紛れも無くスーパーマンであり、同時に、スーパーマンを凌駕するヒーローは、未だかつて存在しておりません。
日本のコミックでお馴染みのドラゴンボールでも、宇宙から飛来した超人的なパワーを持つヒーロー、という意味で似てはいます。が、『ヒーローとしての美学』とでも言うのでしょうか。美しく、黙々と、けれど地球のあらゆる物理法則を無視するような絶対的なパワーを持って、地球人の危機を救う姿は、ドラゴンボールですら真似できない、いや、他の誰にも追随できないでしょう。
物語は、これといって目を見張るような展開はありません。
宿敵である、レックス・ルーサーとの対峙。ロイス・レインとの秘めた恋。
水戸黄門のようなお決まりの物語展開ですが、スーパーマンに限って、あれやこれやの奇のてらった物語は必要ないでしょう。スーパーマンがいる。ただそれだけでもエンターテインメントとして成り立ってしまうように、全てを超越したヒーローは何も語る必要は無く、世界各地で活躍していきます。
強いて言えば、ロイス・レインの婚約者が登場し、しかも子供ができていた、ということ。これは、『スーパーマン リターンズ』オリジナルの物語ではないか、と。
時代を超えて愛されるヒーローの物語でも、変わっていくものは変わっていく。スーパーマンが望もうと望むまいと。黙々と自分の使命を果たしていっても、その心中は複雑だったのでしょう。変わってほしくなかったものも、変わってしまった、と。
でもそれは、今を生きる僕たちにも、少なからず何かあるはず。今の世の中、見渡せば見渡すほど色々なものが変わっていく。でも、何か一つでも、『変わらないでほしいもの』はあると思うんです。昔のよき時代と想いを馳せるものから、自分の根幹を成すものに至るまで。スーパーマンにとってみれば、ロイス・レインのことだと思いますが、多くの人から見れば、それは『スーパーマン』本人を指すのではないのでしょうか。
物語としては5年の歳月だけど、現実の世界としては19年の隔たり。その間、世界は瞬く間に変貌を遂げてしまいました。
けれども、そんな中でも、変わってほしくないものもある。例え他者が、「時代の逆行」と罵ったりしても。そんな時こそ、人々の心の中に、『スーパーマン』は必要になるのでしょうか。だって、この映画のスーパーマンも、何一つ変わることなく、地球の人々を救い続けているのですから。
鋼の肉体と意志を持つ男、ここに帰還です!