日本発のアニメ『マッハGoGoGo』を原作とする作品。アメリカでは題名と同じ『SPEED RACER』として大人気を博したとか。
しかし、何となく主題歌の曲調は耳に覚えがあるものの、どんな内容のアニメだったかは全く憶えていません(というより知りません)。なので、今作を鑑賞した時の感想といえば、初期のスーパーファミコンのソフトで一時期流行っていたゲーム『F-ZERO』の実写化、という感じでしょうか。プラスして様々な仕掛けや対戦相手の車にも攻撃を繰り出しているので、『マリオカート』の要素も少々(勿論、『マリオカート』のようにバナナの皮や甲羅が出てくるわけではありません)。
とりあえず、息もつかせぬほどの猛スピードで車が走り去る爽快感と、普通のレースでは見られない未来的な映像技術がこれでもかというくらいに画面全体に広がっていました。が、物語の部分はほとんどと言っていいほどスッカラカン。
潤沢な資金を持つ大企業が、レーサーの熱意を全く無視してレースの行方を勝手に決めたりするような裏事情や、それでも一致団結して家族総出で至高のマシンを作り上げる、というところにはっきりとした勧善懲悪の構図が見られます。が、「それならもっとシンプルな人間構図でも良くないか? 何のためにこの人は登場したの?」と思うところもしばしば。
また妨害行為として忍者を取り入れたり何故かカンフーの格闘シーンがあったり、物語が進むにつれて「一体この作品は何がしたいの?」と思わんばかり。レースを通じて、スポーツそのものや家族・友情の絆を深める、というスタンスでなく、全く一つのギャグ映画として割り切って鑑賞した方がよさそうです。
ですので、レース映画によくありそうな、一分一秒を争う、全神経を集中させ汗を握りながら食い入りながら、というのは、見所としてはありません。むしろ、誰だ誰に対し、どのような卑劣な仕掛けを施し、それを如何に巧みにかわすか。レースそのものの展開ではなく、もはや華麗な域に達している妨害工作や防御術に目がいってしまいました。まぁ、予てからレースとか物語とではなく、映像技術に対する宣伝文句の方が強く出ていたところがありましたからね。
あまりにも速すぎるレース展開が目の前で繰り出されるため、置いてけぼりにされる観客もいらっしゃるでしょう。最新テクノロジーをふんだんに使った作品にしては、『帯に短し襷に長し』的な何ともいえない作品でした。