海外旅行と同じ感覚で宇宙に行くことが出来る遠い未来。でもそこに住む人間は、科学の進歩のあまり他人を思いやる心を失ってしまっている。
物語のヒロインは、ある日仕事で自分の作業衣がギアに挟まってしまう。作業衣のみならず体ごと引き込まれそうになるが、他の作業員は一切関わることなく、淡々と仕事を続けている。そこを間一髪助けた青年。しかし彼はアンドロイドだった。
人間とアンドロイド。相容れない存在と知りつつも互いに愛し合う。しかし、そのアンドロイドは罪を犯した手配中の犯人だった。ヒロインと一緒に逃げるアンドロイド。車で逃走中、誤ってヒロインが車から落ちてしまう。アンドロイドが助けようとしたところで、警官の銃によって蜂の巣にされ、破壊されてしまう。この時の警官の一言。
「何でコイツはこの女を助けるために引き返したんだろう? ほっといてそのまま逃げれば助かったものを」
最初はヒロインのアンを荒々しくつかみ、豪快に振り回すキング・コングも、ヒロインと触れ合っていくうちに、次第にその接し方も丁寧に、愛情を込めるものになっていく。
こういう、本能だけで生きる野獣にとってみれば、ヒロインも自分を攻撃する人間も、同じ種族である『人間』だ。しかも大多数が自分に怯え、または侮蔑の視線を浴びせ、更には攻撃してくる。彼の頭の中では、「人間は『こういう』動物なんだ」というのがインプットされているんだと思うんですよ。でも、それでも彼女だけは守ろうとした。同じ『人間』の姿をしていても、彼女だけは『違う心』を持っていた。
「自分のことを分かってくれる、理解してくれる」というのは、何も野獣でなくとも、人間も共通のことが言えると思うのです。かく言う僕も同じような経験があります。
単なる暴れん坊将軍ではなく、人間以上に豊かな感受性を持った獣の、壮絶な物語です。
1933年に上映されたオリジナルの『キング・コング』を、僕は知りません。かろうじて、1986年の『キング・コング2』は、存在自体は知っていましたが、内容は良く分かりません。
確かに、CG技術をふんだんに駆使した今作の方が、臨場感溢れる作りになっているのでしょう。でも、そういった技術が無い、全てが手探りで実写のオリジナル『キング・コング』も、ピーター・ジャクソン監督を唸らせたことから、それはオツな映画なのかもしれません。
そして、ヒロインとキング・コングの心の通わせる過程もさることながら、視覚効果が圧巻であること。昨年観た『宇宙戦争』なんて比較にならないくらい、壮大で且つリアリティに富んでいます(さすがに、多くの獣から逃げ惑う人々がなかなか踏み潰されないシーンは、シナリオや演出の所為とはいえ、疑問に思うところ満載ですが(笑))。
秘境からニューヨークに舞台を戻しても、その圧巻振りは衰えず。『スゴイ』の一言です。
PR
トラックバック
トラックバックURL: