ジョーンズ博士の行動力・バイタリティは、約20年経った今でも健在でした。でもね、死ぬから。いくら何でも(特に、最初の方の核実験のシーンとかバイクに乗ってカーチェイスシーンとか…)。
もはやアクション・アドベンチャー映画の枠はとっくのとうに超え、どちらかと言えばアトラクション・アドベンチャーに。最初から最後まで息をつく間もなく繰り広げられる、『「良い子は真似をしないでください」アクション』が目白押し。
しかも主演のハリソン・フォードに限らず、脇を固めるケイト・ブランシェット、カレン・アレン、シャイア・ラブーフに至るまで。そして皆楽しそう(顔は満面必死だけど…(汗))。特にケイト・ブランシェットは、『ロード・オブ・ザ・リング』や『エリザベス:ゴールデン・エイジ』といった作品のイメージが強かったので、今作のような何でもありアクションではどんな活躍をするのか、楽しみ半分不安半分でした。
が、結局のところ、ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグをはじめとする製作者サイドの思惑通りにいったような気がします。
この作品ももう4作目。単なる考古学探検ものは二番煎じだし、火薬たっぷりCGたっぷりのアクションはすぐに飽きられる。それを考慮した上での今作の魅力。それは、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮をしていた『レジェンド・オブ・ゾロ』の時もそうでしたが、喧嘩している者達を囲んで、まるで観戦者のようにエキサイトする。自分が喧嘩の主賓ではないけれど、「これを見とけ!」と強制するのではなく、観客と一緒になってエキサイトする魅せ方。
『インディ・ジョーンズ』シリーズも、最初こそ(1作目・2作目とか)様々なアクションや戦闘に真剣勝負で、ワクワクよりもハラハラ感の方が強く、鑑賞しているこっちの胃が痛くなるばかりでした。が、そんな初々しいまでの切迫した緊張感も3作目以降からは次第に解け始め、ブラック・ジョークも交え、単なるアクション映画に留まらないユーモアな作品になっていったのではないかと思います。
まぁそれでも、ジョーンズ博士の無鉄砲さは4作目になってもちっともお変わりのないことで。年齢を感じさせない、という意味ではいいのかもしれませんけれど(汗)。
そんなこんなで、これまでの作品の懐かしアクションをいくつかピックアップしながら、物語も敵側味方側とどっちつかずに転がっていき、最後のクライマックスに突入しますが、私自身、これまた見事に裏切られました。悪い方向で。流石に映画館で大声を出すわけにはいかないので、心の中で叫びました。「えっ、こんなのアリー!?」って。
これまでの作品が、宗教的・オカルト的な展開でしたので、最後の結末部分は、個人的には微妙に納得いかないのですが……。まぁでも、話の流れからして薄々感づいていたことでもあるし、これまでのルーカス映画やスピルバーグ映画のオマージュを盛り込んだ形と解釈すれば、これはこれでアリかな、と冷静に思う部分もございます。
それが何かは、皆様の目でお確かめください……
以下は、これまで制作・上映された、『インディ・ジョーンズ』シリーズのReviewです。
考古学者インディアナ・ジョーンズのアクション・アドベンチャー映画第1作。タイトルは『レイダース/失われたアーク(聖櫃)』。
冒険やアドベンチャーものの作品というと、大抵の場合、舞台は秘境。隠された宝の位置を示す地図と、解読に必要な古文書。ただでさえ通りづらい欝蒼としたジャングルを潜り抜け、遺跡まで辿りつく。しかし行く手を阻むのは幾多の罠。己の経験と知識、そして勘をフルに発揮し、ようやく目的の宝まで。しかしそこからがアドベンチャー作品の真骨頂。如何にして脱出するか。行きは良い良い帰りは怖いとは正にこのこと、迫り来る罠の恐怖は、俄然宝を得た後の方が大きい。果たして、宝を抱えたまま無事脱出することが出来るのか !
というシーンは実のところあまりなく、良くも悪くもアドベンチャー映画とは一線を画した作品です。単なる宝探しであれば展開として先が見えてしまうので、それを一つの素材としてアクション・エンターテインメントを繰り広げる、という意味では面白い作品ではないかと思います。解読難解な頭脳プレイ系を期待するのでれば、若干物足りないかもしれません。同じ宝を求める二人(ないし複数)の謎解き競争という展開でもないですし。
それはそうとジョーンズ博士、貴方本当に考古学博士なんですか?
普段はスーツをバシッときめて、教壇で考古学の熱弁を振るう教授。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿、とでも言わんばかりの行動力・バイタリティ。特に、発見した世紀の秘宝を対抗勢力に奪われ、それを奪い返そうとするときの教授のアクションは、鑑賞しているこちらからすれば「あれ、絶対死ぬよね」と思ってしまうのです(汗)。世界のありとあらゆるところへ赴き、人類の歴史と未知なる秘宝をその両の眼に収めるために恐怖を恐れず邁進するわけですから、並大抵の体力と尋常な精神力ではないことは分かるのですが……
これが作品上の演出、というのであれば、微妙にかたよっているような気がします。秘宝を奪い返そうと車の中やら上やらで繰り広げられるバトル。車から落ちるか落ちないか、運転の主導権を握れるかどうかの連続に、手に汗を握ってしまいました。方や銃撃戦や肉弾戦。やはりどんな屈強の肉体の持ち主とはいえ、格闘はあまりお得意ではない様子ですねジョーンズ博士。同じアクションシーンでもこの差の大きさに、製作者サイドの思惑か、はたまた技術力の限界か、少々邪険な観方をしてしまいました。
考古学者インディアナ・ジョーンズのアクション・アドベンチャー映画第2作。タイトルは『魔宮の伝説』。
一作目同様、とても考古学博士とは思えなくらいの行動力とバイタリティ、そして無鉄砲さを存分に発揮。特に今作では、そこかしこに敵意に満ちた集団が四方八方に点在するのですから、もうちょっと慎重にいってもいいのに、と思ってしまいました。後半に行けば行く程、行き当たりばったりな作戦の数々。それとも計算通りの結果なのか、はたまた偶然の産物なのか。それでも見入ってしまうのはアクション・エンターテインメントならではの魔力を発揮している作品なのかもしれません。
今作は、インディ・ジョーンズならではの冒険、アクション要素を遥かに上回る、エンターテインメントが主流の要素。それぞれの思惑や人間模様、そして無謀に近いアクションの数々が、前作以上に現実味を通り越して鑑賞者にドキドキワクワクを提供します(良くも悪くもですが……)。「映画なんだから細かいことは気にしない」と言われればそれまでですが、リアリティはともかく、もうちょっと教授らしい、研究者らしい冷静さと慎重さを以って行動してもよくないか? とツッコミを入れずにはいられないのです。
それとも、元々インディ・ジョーンズの性格が、好奇心旺盛だが短気、豪放で無鉄砲というところでしょうか? はたまた教壇で熱弁を振るうのが性にあっておらず、ストレスとフラストレーションが溜まりに溜まって、探検家とは思えないくらいの豪快な行動に出た、とか。いずれにしても冷静沈着に事を運ぶような正確だったら、最初の某取引のシーンのような失態はしないはずなのに……
なんて、冷静を通り越して冷酷な考え方をしてしまうのでした。
要はそんなツッコミはご法度、スクリーンに映し出されるありのままの映像を、エンターテインメント作品として楽しみなさい、ということですな。そもそもが無謀の連続なので、そこにリアリティや理論を無理強いする方が間違っているのです。素直に、ありのままに鑑賞しろと、そういうことですな。
映画とは、現実とは遠く離れた、楽しさだけを切り取った異空間。有り得ないことの連続だけどそれが楽しい。正にその代表作ではないかと思います。繰り返しますが、本っ当に良くも悪くも(汗)。何しろゲテモノ揃いの食事って、現地の人々の食生活を曲解していませんかい? あと、『キングコング』とはるくらいの絶叫シーンの数々もね。
考古学者インディアナ・ジョーンズのアクション・アドベンチャー映画第3作。タイトルは『最後の聖戦』。
インディ・ジョーンズシリーズも3作目になると余裕が出てきたからか、作品から滲み出る一種の『余裕』と申しましょうか、感じがします。勿論それは、これまで主演を続けてきたハリソン・フォード同様。そして、スティーヴィン・スピルバーグ監督も同じなのでしょう、作品に散りばめられた『スピルバーグ・ジョーク』とでもいうのでしょうか、小粋なネタが満載。第2作と違って行きずりの探索でもなく、これまでに収集した文献や暗号、古文書の言葉など、考古学作品ならではの小道具も満載ですので、僕個人としては、これまで以上に見ごたえはあったと思います。
ただ、やはり主人公インディ・ジョーンズのバイタリティと行動力は衰えることなく。お父様の「これが考古学か?」という台詞は正にピッタリ。でも、これまでの無謀さはちょっと抑えていますよ。慎重さはまだまだ程遠いですけれど。
今作の題材は、数々の書物や他の映画作品としても取り上げられている『聖杯伝説』。そして、その『聖杯』を巡る人類最後の戦い。
とはいえ、十字軍等これまで『聖杯伝説』に関わってきた単語が並べられていますが、あくまでインディ・ジョーンズシリーズ中で巻き起こる『聖杯伝説』の物語であり、実際とは(多分全くの)無関係に思います。ですので、あまり深く考えず一つのエンターテインメント作品として鑑賞すればいいのではと思います。あ、勿論「いい意味で」ですよ(汗)。
そして今作は、どちらかというと暗号や古文書解読がメイン。アドベンチャー定番の秘境はほとんどなく、舞台はどちらかというと遺跡の中。そしてその遺跡に辿りつくまでの道のりが、何と荒野! 「ウェスタン映画かよ」というツッコミは無しの方向で。でも時代的にそうですね。第二次世界大戦前の設定ですし。でも主人公は、背格好は西部劇ですが性格は全然西部劇っぽくない…… それは彼のお父様しかり。ボンド・ガールよろしく毎度のごとく冒険に深く関わる女性が今作も登場しますが、「目がお父様に似てる」とのこと。いや、目以上に性格もそっくりですヨ。何気にお父様も果敢に行動を取られるシーンも満載。だってジェームズ・ボンドだったのですからねっ! 勿論、無謀さは息子の方が一枚上手ですけれどね。
この作品を鑑賞すると、この後の作品に登場する幾多の小ネタが、如何にインディ・ジョーンズシリーズの影響を受けているのかが分かります。スピルバーグ監督にとって、インディ・ジョーンズシリーズがどれほど大切な作品であるかが分かります。