もうすぐ友が死ぬというのに、自分は何も出来ない。
ただ、見送るだけ。
友が死ぬのを、ただ、見送るだけ。
死ぬのは怖かった。でも早く死にたいとも思った。
これ以上、友の死に様を見ずに済むから。
大好きな人たちを守りたい。この思いは揺るがない。
自分の命を、お国のために、大切な人たちのために捧げられるのなら。
でも。
次々と死んでいく友を目の前にすると、その思いは、揺らぐ。
大切な人の死を目の前に、残された者の心は、癒す余地も残さず酷く引き裂かれる。
外の世界を知ることなく、孤独なままに、海の底で果てる。
暗く、冷たく、何もない空間の中で。
終始寂しさを漂わせる、そんな映画に感じました。勿論、映画の出来不出来とかそんなことではなく、一人、また一人と、敵艦を駆逐するために、人知れず死んでいく彼らの勇姿に。
『男たちの大和』を動とするなら、この映画は静。しかもそれが、あまりにもくっきりと表れていたため、死ぬ正にその間際の青年たちの表情が、生々しく表現されていました。彼らの死に様を眼にし、引き裂かれた心を引きずりながら、自分の死の瞬間に怯える者の表情も。
死ぬとは何か。
今の今までさっぱり感じることの出来なかった青年たちに、もうすぐそこまで迫ってくる恐怖。
僕はここで死ぬ? これから?
この海底で? 暗い海底で?
ボクノ死ハ、一体誰ガ、知ッテクレルノカ?
本当は、叶えたい夢があるのに。自分が自分でいられる、自分の笑顔を見せることが出来る、そんな自分の居場所が、本当はあったのに。
あまりにも寂しく、暗く狭く、孤独で静かな世界の中で、短く儚い青春であろうとも、彼らは精一杯謳歌していた。最後は結構あっけなかったのですが、その孤独な最期が、若くして全てを絶たれた青年の辛さ、苦しさを物語っています。
市川海老蔵はとてもじゃなけど大学生に見えませんでした。
貫禄ありすぎて、老成しているのでは? と思えてしまうくらい。若さが無いんですよ若さが! あんな、かなり落ち着いた、アダルティたっぷりの大学生なんて滅多にいませんよ!
青春まっしぐら、というより、今時(?)のナイスミドルが夢見るようなかつての青春をもう一度といった方がしっくりくるような、そんな感じがしました(汗)
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コメント
派手さはないですが、自ら志願した彼らの葛藤がひしひしと伝わってくる作品でしたね
観いて切なく、やりきれない思いになりました・・・。
出撃するもの、出来ないもの=死ぬもの、死を待つもの
言葉では言い表せないほど辛かったことでしょう
戦後60年・・・たった60年前にあったまぎれもない事実
少しでもたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。
確かに。若い方たちには一人でも多く観て頂きたい映画だと思います。
死について漠然としか思えなかった彼らが、親友の死を間近で見て、自分もこれから死ぬ運命だということを感じたとき、
初めて、『死に対する怖さ』をヒシヒシと感じたんでしょうね……
>TBコメントありがとぉ~ございまぁ~す!
>
>派手さはないですが、自ら志願した彼らの葛藤がひしひしと伝わってくる作品でしたね
>観いて切なく、やりきれない思いになりました・・・。
>出撃するもの、出来ないもの=死ぬもの、死を待つもの
>言葉では言い表せないほど辛かったことでしょう
>戦後60年・・・たった60年前にあったまぎれもない事実
>少しでもたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。
「WTC」に引き続き、「出口のない海」のTB、ありがとうございました。
この作品、公開初日の朝イチに観に行ったら、館内はほぼ満席で、当時の労苦を経験されたであろうお年寄りたちもたくさん来ていました。
このような「人間兵器」が実在したなんて・・・そして、20歳そこそこの若者達が散っていったなんて、戦争とは本当に愚かで悲しいものだと思いました。
また同じ作品を鑑賞したらTBさせて頂きますね。どうぞよろしくお願いします。
この映画を観まして、人間魚雷『回天』の本当の恐ろしさは、自分が乗り込んで敵艦に突っ込む以上に、一人、また一人と、親友が敵艦に突っ込んでいくところを見なくてはならないところにあると思うのです。
これから死ぬと分かっていても、大切な人が目の前で死んでいく様子を見るというのは、あまにりも残酷なことだったのでしょう。
東南アジア諸国では、大東亜戦争を契機に独立運動に進んでいった。その担い手だったのが、日本の特攻隊だったそうです。いわば、彼らにとって、特攻隊は英雄だったと聞きます。
確かにそうかもしれません。でも、やはり無事に帰ってきて欲しかった。残された人たちがどんな辛い思いをするのかが痛いほど伝わってきますから。
『出口のない海』観ようか迷ってたんですが、やっぱり観にいかねば。
日常で「死」を意識することなんて めったに無い現代の日本に生きているわけですが、この平和がどんなに尊いものか、どんなに有難いものなのか、ふと立ち止まって考えることが、今の私たちにできる唯一のコトなのでは としみじみ。
Cyberさんのレビューいつも楽しく拝見させていただいてます♪
『ラフ』は飛ばしすぎ(wwwかと思いましたが(ノ∀`)
またコソコソ来まっす。ではでは
こんな稚拙な文章ばかり垂れ流しておりますが、今後もお付き合いくださいませ… m(_ _)m
まあ、確かに『ラフ』では暴走しまくりました…(汗
いつもと同じような文体で書くのも芸が無いので、手紙調に書いてみたら… あんな風に… orz
もとい。
『出口のない海』ですが、少なくとも劇中でボロボロ泣くような映画ではないです。
ただ、観終わった後振り返ってみると、寂しさや孤独感が、心の中にジンワリ
と沁み込んでくるような、そんな映画です。
『男たちの大和』では、「皆揃って華々しく散ろう!」という勇壮さが表に出ていますが、『出口のない海』は、一人ずつ死んでいく。人知れず海の底で。それを、残された者が何も出来ずただただ見送るしかない、というのが、本当に辛いです。
是非、ご覧になってください。