英文学最古の作品の一つと言われている、英雄ベオウルフの冒険を語る叙情詩の映画化。古英語文献の中でも約3000行という、当時から見れば長大であることから、言語学上でも貴重な文献であるらしいのですが、
まさか一糸纏わぬ全裸姿で怪物と相対峙する英雄を目の当たりにするとは思わなんだ。
舞台は8世紀のデンマーク。
フロースガール王の宮殿に夜な夜な現れる巨人『グレンデル』(↓ではない)
を退治する為に、精鋭部隊を引き連れてやってきたベオウルフ。全裸での格闘の末、グレンデルの腕をもぎ取り、見事退治する。しかし、グレンデルの母親が復讐のため宮殿を襲撃。甚大な被害を被ったフロースガール王は、ベオウルフに母親退治を申し出る。それを引き受けたベオウルフは、母親の住まう洞窟に単身乗り込んでいくが……
叙情詩『ベオウルフ』は、第一部と第二部に分けられており、第二部は、母親退治に洞窟に向かった後、更なる屈強の力を得て王に君臨しますが、グレンデルよりも更に強力なドラゴンに襲撃され、大苦戦を強いられます。しかし、そのドラゴンこそが、かつて自分が犯した呪われた契りの産物だったのです。
物語の見所としては、やはり(叙情詩的な部分で言うと)第二部からの展開でしょうか。ただ単に敵を打ち破って褒賞を得る、というのは、既にこれまでのCGバンバン取り入れた映画でもやっておりますし、二番煎じなところがあります。けれど、『ベオウルフ』はそれだけに終わらない、更なる災厄が待ち受けているのです。
が。どうしても前王フロースガールのちょっとアヤシイ挙動等を照らし合わせると、『スターダスト』のようにすぐに先の展開が読めてしまいそうな、そんな感じです。
加えて、映像技術はどうかというと、やはり『人ならざるもの』との戦いというのは難しいんでしょうか。
グレンデルにしろドラゴンにしろ、何だか人形と戯れているようで、リアリティがあまり伝わってこない。どちらも現実には存在しないわけですから、怪物たちがどのように動くのか、どのように人間をなぎ払っていくのか、全て想像しなければならないわけで、結局のところ映像も『想像の域』でしかなく、『限りなくリアル』ではないんですよね。
けれど、『ロード・オブ・ザ・リング』はかなりリアルに作られていたように思えます。当時よりも映像技術は革新しているのに、うまく活用し切れていない感じがします。『300』でも使用されていた技術もふんだんに活用しているようですが、僕としては『300』の方が一枚も二枚も上手に思えました。
さて、これも言わばファンタジー映画に部類する作品ですが、お子様連れで鑑賞されるのは控えた方が宜しいかもしれません。内容や台詞まわしが割りとアダルトですので……