ナルニア国物語の第3作。前々作・前作と同じサブタイトルでしたが、今作は、原作の『朝びらき丸 東の海へ』ではなく、『アスラン王と魔法の島』というサブタイトルが使用されます。
カスピアン王子の角笛によって召喚され、テルマール人の無慈悲なナルニア侵略から救い、3年の月日が流れていました。そこにまた召喚されたペベンシー兄弟。しかし、召喚されたのは、次男のエドマンドと次女のルーシーだけ。現実世界では、ピーターとスーザンは遠いアメリカに渡り、次の人生を歩んでいる真っ最中でした。
何故彼らだけなのか。それはもうピーターとスーザンは、自身の成長の糧としてナルニアを必要としていないから。ナルニアは、単に魔法や幻獣、ファンタジーの世界を堪能する為の世界じゃない。自分の身体と心を成長する為の旅。自分の進みべき道を見出し、選んだ時、ナルニアは目の前から見えなくなってしまう。その分、エドマンドとルーシーは、まだまだ自身を鍛錬する必要がありました。第1作の『ライオンと魔女』のように、エドマンドは己の虚栄心と、次男という長男・長女からどこか抑圧された立場で、奔放な次女のお守りをしなければならないところに、どこか遣る瀬無さを感じていました。そこを白い魔女の付け入られ、一時は戦線を離れ、利用されることになるのですが。そしてルーシーは、これまでのように素直で幼顔の目立つ少女から、少しずつ女性の顔立ちへ。しかしそれと同時に目覚める己の自我。姉の美しさ、聡明さに憧れを持つも羨望を覚え、自分に対する自身の持ちようにもつながっていく。
彼等は、まだまだ成長しなければならない。彼等はこれから大人になる。その過渡期。そのために、彼等はナルニアがまだまだ必要なのです。そんな彼等だからこそ、今作は、己の欲望や価値観を揺さぶられるような様々な仕掛けが待ち受けます。
けれど、それでもずっとナルニアに頼るわけにはいかない。彼らも、ピーターやスーザンと同じように、いつかはナルニアから卒業する時が来るのだから。
と、いうわけで。
ペベンシー兄弟は、4人とも自分達の強さ・弱さをそれぞれ自覚し、何をすべきか、どのように成長すればいいのかが分っている、極端な表現で言えばどこか達観した考えの持ち主なのですが、やはりそれでは淡々とした冒険譚が繰り広げられるだけ。やはり、ナルニアを知らないキャラクターが必要ではなかろうかと。
そこで登場! ペベンシー兄弟の従兄弟、ユースチス!
現実主義とか一時ながら、それは、ファンタジーの生活を堪能したペベンシー兄弟に対するあてつけ。兄弟の居候先の息子ということで自分が優越感に浸らずにはいられない方便。それだけに、非常に陰険で意地悪。いいですねぇ。身体と精神の鍛え甲斐がありますねぇ(リーピチープばりの心持ち)。
結局のところ、彼もナルニアでの冒険を経て、成長していきます。しかし、彼もまだまだ自身の成長に対しては過渡期。第4作『銀のいす』の主人公を務めるように、彼にはまだナルニアでの修行が必要なのかもしれませんね。
さて。肝心の物語は、というと。
昨今のビッグタイトルの作品よろしく、Part1とPart2に分けた方がいいのではなかろうか、と思えるくらいの物語の展開の速さ。あまりの速さに、その前後関係や事実関係が曖昧でついてこれない部分もありました。
『ライオンと魔女』は、ファンタジー世界突入の導入部分。『カスピアン王子の角笛』では、カスピアン王子にとって、そしてテルマール人に征服されたナルニアにとって、伝説の4人の王が必要だったから。では、今回の召喚目的は? 今や王となったカスピアンにしろ、ナルニア人にしろ、特別伝説の王をしていない。勿論、いてくれればそれはそれで助かるけれど。ですので、むしろナルニアが伝説の王を必要としているのではなく、伝説の王(エドマンドとルーシー)がナルニアを必要しているのではないか、と。ユースチスもある意味で。
その部分は、冒険の初めの頃は全く分からず、冒険が進んで、その途中でそうではないかと思えます。しかし、朝びらき丸の目的である七卿探索が、何かいつの間にか七卿が持っている剣の収集になったり、七卿と七つの剣が意外にあっさり見つかったり、ラマンデゥの島を示す青い星が、若い娘に変わったりしかもそれがほんの一時だったり。とにかく、色んなものがあっさり過ぎ去ってしまって、それだけにかなり壮大な猛犬譚であるのでしょうけれど、どこか小ぢんまりに見えてしまうのです。
どうやら、本作は、原作をそのまま踏襲して作られたものではなく、7本の剣の捜索を加えることによって、より観客が夢中になれるようにアレンジしたもの、だとか。だから、サブタイトルも『アスラン王と魔法の島』というふうになったのではないか、と思うのですが…。
それでも、何かトントン拍子に物語が進んでいくところに、短い間に何とか詰め込んだ、という感じが否めません。過去にもハリーポッターシリーズでも同様のことがありましたのに。。。
もし、物語を隅々まで堪能するのであれば、原作を先に読んだ方がいいかもしれません。僕は『ライオンと魔女』でも『カスピアン王子の角笛』でも、特に原作を読まなくてもすんなりと物語の世界を堪能することが出来たのですが、今作は先に原作を読んだ方が、展開の速さに振り回されず堪能できるかもしれません。
カスピアン王子の角笛によって召喚され、テルマール人の無慈悲なナルニア侵略から救い、3年の月日が流れていました。そこにまた召喚されたペベンシー兄弟。しかし、召喚されたのは、次男のエドマンドと次女のルーシーだけ。現実世界では、ピーターとスーザンは遠いアメリカに渡り、次の人生を歩んでいる真っ最中でした。
何故彼らだけなのか。それはもうピーターとスーザンは、自身の成長の糧としてナルニアを必要としていないから。ナルニアは、単に魔法や幻獣、ファンタジーの世界を堪能する為の世界じゃない。自分の身体と心を成長する為の旅。自分の進みべき道を見出し、選んだ時、ナルニアは目の前から見えなくなってしまう。その分、エドマンドとルーシーは、まだまだ自身を鍛錬する必要がありました。第1作の『ライオンと魔女』のように、エドマンドは己の虚栄心と、次男という長男・長女からどこか抑圧された立場で、奔放な次女のお守りをしなければならないところに、どこか遣る瀬無さを感じていました。そこを白い魔女の付け入られ、一時は戦線を離れ、利用されることになるのですが。そしてルーシーは、これまでのように素直で幼顔の目立つ少女から、少しずつ女性の顔立ちへ。しかしそれと同時に目覚める己の自我。姉の美しさ、聡明さに憧れを持つも羨望を覚え、自分に対する自身の持ちようにもつながっていく。
彼等は、まだまだ成長しなければならない。彼等はこれから大人になる。その過渡期。そのために、彼等はナルニアがまだまだ必要なのです。そんな彼等だからこそ、今作は、己の欲望や価値観を揺さぶられるような様々な仕掛けが待ち受けます。
けれど、それでもずっとナルニアに頼るわけにはいかない。彼らも、ピーターやスーザンと同じように、いつかはナルニアから卒業する時が来るのだから。
と、いうわけで。
ペベンシー兄弟は、4人とも自分達の強さ・弱さをそれぞれ自覚し、何をすべきか、どのように成長すればいいのかが分っている、極端な表現で言えばどこか達観した考えの持ち主なのですが、やはりそれでは淡々とした冒険譚が繰り広げられるだけ。やはり、ナルニアを知らないキャラクターが必要ではなかろうかと。
そこで登場! ペベンシー兄弟の従兄弟、ユースチス!
現実主義とか一時ながら、それは、ファンタジーの生活を堪能したペベンシー兄弟に対するあてつけ。兄弟の居候先の息子ということで自分が優越感に浸らずにはいられない方便。それだけに、非常に陰険で意地悪。いいですねぇ。身体と精神の鍛え甲斐がありますねぇ(リーピチープばりの心持ち)。
結局のところ、彼もナルニアでの冒険を経て、成長していきます。しかし、彼もまだまだ自身の成長に対しては過渡期。第4作『銀のいす』の主人公を務めるように、彼にはまだナルニアでの修行が必要なのかもしれませんね。
さて。肝心の物語は、というと。
昨今のビッグタイトルの作品よろしく、Part1とPart2に分けた方がいいのではなかろうか、と思えるくらいの物語の展開の速さ。あまりの速さに、その前後関係や事実関係が曖昧でついてこれない部分もありました。
『ライオンと魔女』は、ファンタジー世界突入の導入部分。『カスピアン王子の角笛』では、カスピアン王子にとって、そしてテルマール人に征服されたナルニアにとって、伝説の4人の王が必要だったから。では、今回の召喚目的は? 今や王となったカスピアンにしろ、ナルニア人にしろ、特別伝説の王をしていない。勿論、いてくれればそれはそれで助かるけれど。ですので、むしろナルニアが伝説の王を必要としているのではなく、伝説の王(エドマンドとルーシー)がナルニアを必要しているのではないか、と。ユースチスもある意味で。
その部分は、冒険の初めの頃は全く分からず、冒険が進んで、その途中でそうではないかと思えます。しかし、朝びらき丸の目的である七卿探索が、何かいつの間にか七卿が持っている剣の収集になったり、七卿と七つの剣が意外にあっさり見つかったり、ラマンデゥの島を示す青い星が、若い娘に変わったりしかもそれがほんの一時だったり。とにかく、色んなものがあっさり過ぎ去ってしまって、それだけにかなり壮大な猛犬譚であるのでしょうけれど、どこか小ぢんまりに見えてしまうのです。
どうやら、本作は、原作をそのまま踏襲して作られたものではなく、7本の剣の捜索を加えることによって、より観客が夢中になれるようにアレンジしたもの、だとか。だから、サブタイトルも『アスラン王と魔法の島』というふうになったのではないか、と思うのですが…。
それでも、何かトントン拍子に物語が進んでいくところに、短い間に何とか詰め込んだ、という感じが否めません。過去にもハリーポッターシリーズでも同様のことがありましたのに。。。
もし、物語を隅々まで堪能するのであれば、原作を先に読んだ方がいいかもしれません。僕は『ライオンと魔女』でも『カスピアン王子の角笛』でも、特に原作を読まなくてもすんなりと物語の世界を堪能することが出来たのですが、今作は先に原作を読んだ方が、展開の速さに振り回されず堪能できるかもしれません。
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