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2024/11/23 11:39 |
[Review] シッコ
シッコsicko

-【名】 (《複》 ~s)
《米俗》 精神異常者、倒錯者



以前『華氏911』を観賞しましたが、(個人的には)正直好きになるには程遠い作品だと思いました。僕自身も決して完全に中立的な考えを持つ人間だとは思っておりません(やはり人間ですから、何かしらの贔屓目は見てしまうもの…)が、マイケル・ムーア氏の着眼点の偏り方に、うんざりしたところがあったからです。
でも、すぐ後に気づきましたけれど。彼の作品の多くは、こんな調子なんだということを。また同時に、自分が如何に今の社会に、そして地球上での出来事に無頓着だということに気づかされました。

『華氏911』も『シッコ』も同様に、アメリカ社会の矛盾と異常性をバッサリと斬ったものですから、作品としての方向性は同じです。でも、やはり『華氏911』で取り上げられたのはテロや戦争。普通に日常生活を営んでいる人たちからみれば、まだまだどこか遠い存在に捉えられてしまうのは否めません。
ですが、一方の『シッコ』は、私達の生活は勿論、生命にまで直結する医療保険。あまりにも身近な存在にもかかわらず、テロや戦争と同じように、はたまたはアル・ゴア氏の映画『不都合な真実』と同じように、人々の生活を脅かしている。
『医療』と『保険』。どちらも、人々の生活と生命を守る言葉。安心を運ぶ言葉。それが、人々を脅かしている。

この作品に登場する、アメリカ医療保険の喰いモノにされた沢山の人々。
人の世界はどこも不公平。それは否めない。でも人の『生命』まで不公平ではないはず。
しかもそれが、お金を持っているか持っていないかで、『生命』の価値が同じ『人間』によって、『勝手に』決められてしまう。
これは、力を得たあまり、力に溺れ、本当の『強さ』を見失ってしまった国家の物語。


『世界の警察』を自負しているだけに、アメリカは確かに強い。
そんなアメリカの過ちの一つと言えば、『強さ』の本当の意味を履き違えてしまったこと。
権力、学力、財力...etc  眼に見える、数値に表れる『強さ』だけが、アメリカで生きられる証。力を持たないものは、いとも簡単に切り捨てられる。たとえ力を持っていても、突付けるだけ弱点を突付いて、搾取できるだけ搾取する。
僕は強い人が好きです。だからといって、弱い人が嫌いなわけではありません。僕が嫌いなのは、弱いままで甘んじている人。強くなろうとしない人。だってこの世には、本当に誰かの助けを借りないとどうしようもない人だっているから。でもその人は、好きで弱くなったわけじゃない。そのまま弱い立場に甘んじたいのなら、一生弱い立場でいればいい。あまりにも遅いけれど、それでも一歩ずつ踏み出そうという『強い人』であれば、僕は自分の出来る限りのことを、力の限り応援しようと考えています。

でも、そんな人ですら、アメリカは容赦無く切り捨てる。立ち上がろうとする気力すら奪い取る。
作中で、「フランスの場合は、政府が国民を恐れているが、アメリカの場合、国民が政府を恐れている」とありますが、こんな圧政とも思えるような政策は、むしろ政府が国民を恐れているから、無理矢理にでも封じ込めておこう、というふうにも見えるのです。

そしてこれは、何もアメリカだけの問題ではありません。今の日本だって五十歩百歩。どこかの省庁の体たらく振りは、もはや笑いすらおきない領域にまで達していますから。決して他人事ではないのです。


最後に。

カナダやフランス、イギリスは勿論、社会主義のキューバでさえ、無料もしくは低価格で高水準の医療サービスを受けられるシーンを観て、正直僕は、作中のアメリカ人と同じように、素直にはなれないと思いました。勿論、アメリカ人の感じ方とは別方向ですが。
高水準の医療サービスを、ほぼ無料に近い状態で受けられる。それも待ち時間も比較的短くて。勿体無くて、恐れ多くて、とてもとても受診できません。

  「すみません、お会計お願いします
  「無料だからお金は要らないよ
  「え゛っ、そそそそんな滅相もない! こんなにサービスを受けたのに無料だなんて!

なーんて会話が飛び交いそう。これは民族性によるものでしょうか。まあ僕の性格でもあるんでしょうけれど(笑)。
ちなみに。

アメリカの医療保険の冷酷振りは、全てが映画に登場したような事例とは限りませんし、一方で、映画に登場した事例は氷山の一角に過ぎません。
カナダやフランス、イギリス、果てはキューバでも、すごく医療制度が整っているように見えますが、これも全てではありません。多分、農村部とかはまだまだ制度の未整備なところがあるはず。

何よりもこの映画で訴えたいのは、『人の生命』だけはどこにも差別のしようがないはずなのに、何故ここまで差がつくのか、ということ。医者にとって、人の生命を守るのは当然のことなのに、何故「お金がないから治療しない」「~~の制限があるから治療を拒む」というような発想ができるのか。
同じ人間として信じられない、という、そんな世界が現実に存在すること。それを知ってもらいたいというのが、この映画の狙い、訴えたいことだと思います。

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2007/09/11 00:30 | Comments(0) | TrackBack() | Review - Movie

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