青年コミックスについては、小学生のときから読んでいました(『メゾン一刻』とか『YAWARA!』とか)が、殆どが単行本で読んでおりました。それが、単行本だけでなく、実際に『週刊誌』を手に取り、他の青年コミックスにも興味を持ち始めたが、そのきっかけになったのが、きたがわ翔の『ホットマン』です。
自分の娘のアトピー性皮膚炎が、かつての自分の素行不良と不摂生が原因の可能性が高いと思い込み、一転、健康オタクになった主人公。一見、バカがつくくらいのヘルシー漫画かと思いましたが、それはこの漫画の目的を描くための一つの題材。本当の目的は、『家族の絆』です。
青年コミックスと言うと、イメージとしてやはり強く出てしまうのが、性描写と暴力描写。なまじ漫画を見る対象が文字通り青年ですから、そこら辺のタガを外して描いている漫画もしばしば。そんな中で、家族の絆を表面に色濃く出す、青年コミックスとしては似つかわしくない漫画というのは敬遠されがちなんじゃないかと思いましたが、意外や意外、ドラマになるくらいに人気のある漫画なんですね。
また、僕はこの漫画がある程度連載された後に、初めて週刊誌に手をつけ、そこから更に単行本も揃えました。まだ大学1年生の頃。もし、この漫画が中学生や高校生の時の連載だったらどうだったでしょう? 大抵の中学生や高校生って、自身を無理に背伸びする、いわゆる「大人に見せる」という動きが強いものですから、まだ精神的にも未熟なのに、強がって性描写や暴力描写の強い漫画に手を伸ばしたりして。僕も例にもれず、そうした「背伸びしてでも大人に見られたい」という意識がありましたから、そういう時代に『ホットマン』を見ても、「何だこの漫画、つまんねー」とか言って一瞥していたかもしれません。
でも、この漫画に出会えた時のタイミングが良かった。高校を卒業して、まだ親に学費を払ってもらえるモラトリアム期間であっても、無理をして背伸びをしなくてもすむ。少し余裕が生まれ、青年誌に対する見方も、勿論余裕ができたのでしょう。だから、『ホットマン』を読み始めたときも、今までの青年誌のイメージから見れば違うものだったけれど、すんなりと自分に取り込むことが出来たんだと思います。
家族構成も、お父さん、お母さん、子供、という単純な構成ではなく、皆10代半ばから20代の、いわゆる『心の変化』が激しい人々。そんな中で、精神的に皆を支えているのが、まだ5つの主人公の娘。『体の変化』が最も激しい家族でありながらも、屈託の無い純粋な気持ちが、ほんの僅かな火がついただけでも儚く壊れてしまいそうな家族の心の絆を、結び付けています。
大人だけどまだ大人になりきれていない者、これから大人になろうとしている者、その者達を精神的に影から支えている少女。自己主張が多すぎて時には衝突する事もあるけれど、アンバランスなりにもバランスの取れた『家族の絆』を展開している。彼らが本当の意味で大人になったら、それこそ、どんな刃物も切ることが出来ない絆に成長しているのかもしれません。
ほのぼのと、温かく、尚且つ家族の力強い絆が、この漫画には秘められています。