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2024/04/25 20:48 |
[Review] ブレイブ ワン

ブレイブ ワン幸せだった。つい昨日まで。
『全て』が変わってしまうまで。
戻りたい。『幸せ』を実感していた、あの時に。
でも、もう戻れない。
自らの手を血で染めてしまった瞬間から     


作中で、主人公が「ニューヨークは『世界で最も安全な都市』」と言います。あの忌まわしい世界同時多発テロが発生し、ニューヨークの光景が一変したときから。本来あるべき建物がなくなったから、というだけではなく、街の様相自体も一変した、ということ。警察官がどこにでも配備されているように、「もう二度と、私達の平穏な生活をテロに脅かされない」という空気。ニューヨークという街を変えた空気。でも、街を離れた闇に包まれた世界まで、人の監視は届かない。
そしてそれは、東京でもありうる話。光が照らされる、人の目がいきわたる場所は、見た目にも『安全』。でも、一歩道を逸れれば、闇の中で目を凝らせば、劇中のような暴力事件が、そこかしこに存在します。そういえば、『バベル』のプレミアム試写会で、海外の報道陣が東京のうぶれた顔にビックリされたそうで。でもそれは本当。東京でも、いつ襲い来るか分からない恐怖があります。幸せだった生活が、一瞬にして奪われてしまうくらいの。

幸せが奪われた後、人はどうなるか。ほとんどの人は、ジョディ・フォルターが演じるエリカ・ベインのように、PTSDのように心を病に蝕まれ、外を出ることすら叶わず、生きている心地すらしない。
そんな彼女が、これから生きるために手に取ったのは、一丁の拳銃。最初は、単に自分のみを守るためのものだった。でも、突如予期しない自分に降りかかる脅威を振り払うために引いた引き金が、彼女を別人にしてしまった。人を撃っても、震えない『もう一人の自分』に。
復讐のために引き金を引くにしても、彼女は決して殺人鬼ではないし、人を殺すことに使命を感じることもありません。この世の悪を抹消するなんてことも考えていないし、ましてやそんなことができるはずもない。では彼女は何故、目に映る悪人を撃っていくのか。単に目の前の悪人が許せないから、ではないと思うのですが、そこまではこの映画では表現されていません。きっと、彼女自身ももしかしたら分かっていないのでは。それほど、彼女にとって忌々しい事件は、彼女の心を変えてしまいました。

でも、それを何も分からない人に対し、面と向かったり話をする方がもっと辛い。全くの他人は彼女のバックボーンを知らないわけですから、「悪を殺すのは正義の試みだ」「悪でも殺すのは決して赦されない」など呟く。他人なんだから、決して分かり合えないんだろうけれど、それでも、その一言一言が、一層彼女の心を抉り取る。


この映画を観て一番思うのは、もし、自分が彼女と同じ立場だったら、どうなのか。
きっと、『Yes』でも『No』でもない。復讐によって誰かを傷つけることは、法による正当な行為ではない一方で、この手で傷つけ者を裁いてやるという部分があるから。かつて、大切な友人が暴漢に襲われ、入院するくらいの傷を負ったから。
その暴漢が目の前にいたら、きっと僕も、越えてはならない一線を越えてしまうのでしょう。戻れない道に。幸せを奪った者を許せるほど、僕は人間ができていないし、きっとこれからもそうでしょう。けれど、そんな僕も、誰かの幸せを奪う権利など、ありはしないのです。

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2007/10/27 22:34 | Comments(1) | TrackBack() | Review - Movie

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コメント

私もブレイブワン見てきました。
とっても重い映画でしたね。
ラストシーンはあれでいいのか「?」ですが、
ジョディの迫真の演技にはうならされました。
トラックバックさせていただきますね。
よろしくお願いいたします。
posted by ともりーんURLat 2007/11/05 21:42 [ コメントを修正する ]
Re:ブレイブワン見てきました
コメント有難うございます。

そうですねー。ジョディ・フォスターは迫真でしたねー。怯えながら外出したり仕事をする傍らで、無表情で人を殺していくところなんかは!
最後のシーンは確かに疑問を感じますが、あれはあれでよかったと思いますけれど、それでも、「人を殺した」ということが赦されるわけではないんですよね。

難しいところです。
2007/11/09 08:29

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